marshmallow
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メキシコーク6

高尾はどういうつもりで私を抱いたんだろう。

家に着いたら小降りの雨が降ってきた。

どういうつもりでキスをして、どういうつもりで抱き寄せたのか。

高尾があの曲を流さなかったせいで眠れない。

彼女の存在なんて知っていたし
一緒の姿を見たのは今回が初めてじゃない。


チャンダンの香り
白いソファー

長い手足に
大きな目



あの曲が流れなかっただけ。
ただそれだけで、高尾の全てが嘘に思えてきた。











『奪うとか、考えないわけ?』

それから一週間がたった水曜日に
私はワカとランチをしていた。
私はミートソース
ワカはグラタンパスタをきれいに平らげたあと、セットのコーヒーを飲みながら
突然ワカが質問してきた。
私はびっくりして
熱いコーヒーで舌を火傷してしまった。

『ルール違反だよ』
私がごまかそうとすると

『ルールなんて元々ないじゃない。ただなんとなくそうだっただけで』
と言い返された。


たしかに。


『奪うつもりなんてないよ。私が出会ったときには既に高尾の横にはあの人がいたし…』

『じゃあ、諦めるの?』

諦める?そんなこと考えたこともなかった。
私の高尾へのキモチは
初めて会ったあの日から、一年の間すくすくと順調に育っていた。
花を咲かすことはないものの、枯れることもなく。


『どーしたもんかねぇ…』
タバコをふかしながら、眉間にしわを寄せるワカ。


ふたりの間に沈黙が流れた。


寝たことは言うべきだろうか言わないべきだろうか。

『寝たんでしょ?』


テレパシー??


ワカはニヤニヤしてる。


私は目を合わせずうなずいた。

メキシコーク5

帰り道。
イベントは4時という中途半端な時間に終わった。

『もう一杯飲んでく?』
ワカがいった。状況を察したのかなんなのか。

『行く』

目の前には高尾と彼女の後ろ姿。

(バイバイ)
心の中で呟いて、私たちは交差点を右に曲がった。

メキシコーク4

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クラブに着くと

高尾がちょうど回す時だった


私はただ

片手にアマレットジンジャーを持ち
壁に寄りかかって曲を聞きながら

高尾のうすいグレーのトップスとミルクティー色のくせのある髪の毛をみていた


真っ白な肌
華奢で大きな手


すべて私のものになればいいと願う


長いまつげも
笑うと細くなる目も







でも





あの曲は流れなかった







回しおわった高尾に
ロングヘアーの女のヒトが近づいていった



私は知っている


あのヒトは高尾の彼女




そんなことは
高尾と出会ったその日に
知っていた