アメリカ生活には欠かせないもののひとつ---車の話。
2年前の渡米当初では考えられなかったことだが、
我が家にも今は2台の車があるのだ。
初めはもちろん1台だけだった。(ここで暮らすには、少なくとも
一家に1台は「絶対に」必要である。) とりあえず空港でレンタ
カーを借り、中古車屋で手頃な車を選んだ。Ford サンダーバ
ード、1700ドル。普通のセダンである。
そしてその1台は、当然のように夫が使っていた。夫は機材や
部品など運ぶものが多い上に、広範囲で移動するので、車は
どうしても必要なのだ。
それで私と子供たちははどうしていたかというと、当然のように、
歩いていたのである。てくてくてくてく、どこへ行くにも。
その頃の生活はこんな風だった。
朝の暗いうちに起きて、娘と3人で長男の学校まで歩く。どんど
ん歩いて45分。遠い遠い。
そこから娘の幼稚園まで、さらに35分。この頃になると娘も疲れ
てぐずり出す。(4歳だもの、当たり前だ)それをひきずりひきずり、
時には抱っこしたりしながら歩く。こっちもへとへとだが、とにかく
行くしかない。幼稚園から家までまた40分かけて歩いて帰る。
帰る頃には9時半を過ぎている。
幼稚園は12時までなので、お弁当を持って11時過ぎにまた家
を出る。娘を迎え、長男の学校が終わる2時半まで公園や図書
館でなんとか過ごし、長男を連れて家に帰る。途中買い物もす
る。重いので必要な分だけ。家に帰り着くと4時過ぎである。
ほとんど1日が終わってしまう。日中の時間のほとんどを歩いて
過ごしているような気がしていた。いい運動にはなったけど。
やがて雨季となり、近所の友だちにずいぶん助けてもらった。
子供たちも慣れて体力もつき、少しは早く歩けるようにもなった。
夫が日本から折り畳み自転車を持って (ばらしてダンボール
箱に入れて、空港の通路を蹴飛ばしながら?歩いてきたらしい)
きてくれたので、子供たちに自転車を買い、通学は自転車にな
った。
(この折角の折り畳み自転車は、後に盗まれてしまった。)
私は大学に入り、車なら20分で行けるところをバスで1時間か
けて通った。
これが約半年続いた。
翌年になって、こちらでたまたま知り合った夫の高校の先輩が
日本に帰ることになり、車を譲ってもらうことになった。87年の
赤のBMW325i、600ドルである。(打ち間違いではない。)
メーターは17万7千マイルで止まっている。シートは破れかけ、
ダッシュボードにはヒビが入り、テールランプのカバーは割れた
ところに赤いセロハンが貼ってあり、後ろの片方の窓は開かない。
でも一応走って止まれる。この際何だって走ればありがたいのだ。
おかげでようやく車が2台になった。
初めは私がサンダーバード、夫がBMWに乗っていた。(夫はドイ
ツ車が好きなのだ。)
ところが私がサンダーバードをぶつけてしまい、そのせいかどう
かはわからないが、その後トランスミッションが壊れてしまった。
修理すると千ドル以上かかるので、手離すことにした。また車1台
生活に戻ってしまった。
しばらく我慢していたが、送り迎えに自分の通学、買い物と、
動き回るのにあまりに不便で、渋る夫を説得してもう1台購入した。
フォードの「Explorer」という、こちらではとてもポピュラーな、
パジェロみたいな形の車である。これは道端の「For Sale」
の中から見つけた。2800ドルを2000ドルにまけてもらう。
ところがこの車もいろいろと問題があった。最大の難は、
パッセンジャーズシートの土台の片側の金具が壊れて、
シートが傾いていることである。買ったときは大丈夫だった
が、あるとき走りながらシートがガタン!と外れ、ただ外れた
だけかと思ったら、金具が折れていた。大変危険だがどう
しようもない。直そうと思ったら、土台ごと「全とっかえ」だろう。
いっそ車ごと「全とっかえ」した方が安上がりかもしれない。
いずれにしてもそんな余裕はないので、そのまま乗っている。
最近は慣れて気にならなくなった。オソロシイ。
結局私がBMWをもらい、夫がExplorerに乗って、今に到って
いる。新聞配達もBMWでこなしている。走行距離はいくつに
なったんだろうか。あまり考えたくはない。タイヤも相当すり
減っているが、夫が「替えた途端にエンジンがダメになるから、
壊れるまでそのまま乗ってれば」というので、おとなしくその
まま乗っている。いいかげん潮時かも。
この恐るべき2台の、どちらが先に壊れるか。そろそろ次の中
古車を探さねば。
(次回へ続く)