ついに迎えたライブ当日。


朝から緊張していた。


ここまで自分で「したいこと」を詰め込んだバンドでライブやるなんてそうそうなかったから、それが人にどう映るのか、とかは一番最初だからこその不安と「ようやくお見せできる」の入り混じった感覚。


ロゴスに入った時、顔馴染みのBATTERYが満面の笑みで迎えてくれたのは非常にリラックスできたし、これでようやく彼らにも肩を並べられるのかな(は、これから次第だけど)という、ここで一気に土俵に上がれたような気分だった。


そっからは本当に矢のように時間が過ぎた。


出番が近づくにつれて俄かに楽屋がやかましくなってくる。


jokerである。


なんせ初めてだからメイクの方法なんか知るはずもないので、夜海ちゃんに教えてもらいながらやってた


しかし、騒いでたのも最初だけで

なんだかんだと悪そうなピエロになっていく。


コイツは前から本当に器用でなんでもすぐにこなせる。


ただ一つを除いては。


俺も「そこまでやるんか!」と驚いたんだけど

白黒市松模様のカラコンを用意していたのだ。

凝り性はこういうとこまでいくからすごい。


このカラコン装着時が彼にとって人生初のコンタクトレンズというのだから

まぁすごい騒ぎようであった(笑)


KINGに手伝われながらどうにか装着。


さて。


なんだかんだありながら準備は万端。


そして楽屋の内線が鳴る。

「ステージ袖に」


ついにきた。


俺はこの時の胃がキューっとなる感じが好きだ。


不安もありながら、期待が少し勝ってる感じ。


前バンドが終了し、転換。


照明が落ちる。


SEが鳴る。


メンバー一人ずつ登場。


ドラマーなので先陣を切るのは俺なわけなんだけどそこそこな拍手で迎えていただいたのはちょっと感激した。


で。


肝心の一曲目


実は覚えていない(笑)


記念すべき一曲目なのに、だ。


とにかく、とにかく必死こいてやってたので


ただ一つ覚えているくだりがある。


最初から暖かく迎え入れられけっこう気をよくしていた我々なんだが、思っていた以上にMCが饒舌だった。


まさかとは思うがその会場の我々への友好的な空気を独り占めしたくなったのかjokerがトチ狂う。


「俺以外がキャーキャー言われんのはホント腹立つ!」


場内爆笑!!!


いや、俺が一番笑ってたと思う。


人はここまで変わるものだろうか、と。


以前からきのぴーのMCは独特で面白いとは言われてたし思ってもいたんだけど、ここまで吹っ切れる事はなかった。


きのぴーがjokerになった瞬間を見た気がした。


そしてそこに強烈なカウンターをかました男がいる。


KINGだ。


「…こぉのクソピエロ…」


後から聞いた話なんだがPAさんまで爆笑していたらしい。


この瞬間だな


「あぁ、俺の出した答えは間違いじゃなかった」

って思えたのは。


そんなのをこんなMCのくだりで実感するなんて頭おかしいのは分かってんだけど、やってるライブが楽しくて、トークがこうやって自然に回ってく


そのループがめちゃくちゃ心地よかった。


あー。


俺はこんな自分と仲間に会いたかったんだ。



とかって美談ぽく語ってるけど現場はもう、4曲しかないセトリでなかなかの時間を持たせないといけないからめちゃくちゃ喋ってたし、その大半はロクでもない内容。


だって最後、KINGが「おーいBATTERYさん、こんなんでいい?そろそろやめていい?」だからね(笑)


そして記念すべき第1回目のライブは幕を閉じた。


終演後は携帯に山のようにメッセージが来ていた。

ほとんどが好意的なものだった。


こんな事言ったら、だけど

ZENの時に言われたそれとは180度違っていた。


その後かな。

打ち上げでBATTERYのメンバーから言われた言葉がすごく心に響いた。


「めちゃいいバンドで帰ってきてくれましたね!」


本当に本当に嬉しかった。


自分の自信を持って作ったバンドがここまで認めてもらえる事。


この日飲んだビールの味は忘れない。



次回【joker、夜海 正式メンバーに】