「うたごえ」で歌われている歌の一つに、『花をおくろう』という曲がある。

界隈ではよく知られているけれど、それ以外ではあまり一般的ではないので、代表的な演奏の動画を以下紹介しておく。
花をおくろう (合唱研究会)

 

私は大学生の頃にうたごえサークル「静岡大学合唱団いぶき」(現在は「IBUKI」という名前で存続してはいるが、すっかりポピュラー系のバンドサークルになってしまっている)に入団して、覚えた。

 

 

(採譜:会津里花、※コードについては後述)

 

特に、無伴奏の合唱が圧巻だった。(上の動画もそうだが一般的にはピアノ伴奏)

大好きだった。

ただ、残念ながらこの無伴奏での合唱の実際の演奏を記録した音源や動画はほとんどない。

私自身も、実を言うと「楽譜だけ」の状態から合唱のパート(当時は「男性」だったのでバスやテナー)と主旋律を覚えるところから、この曲に入った。それが最終的に「どう響く」ことになるのか、正解も理想もなかった。

 

で。

この「無伴奏混声四部合唱」が、なかなかの「曲者」なのだ。

編曲は松永勇次さん。静岡出身だが東京で活動していた人。

私は中央合唱団の研究生(第118期)の頃にお世話になった。

現在は80代でご存命だが、先日一度電話でお話ししただけで詳しいことは存じ上げない。

 

その松永編曲(以下敬称略にて失礼)が、18歳大学1年当時の私には、まだまだ理解できない音に満ちていた。

「理解できない音」=それは♯や♭や♮などの付いた、複雑な和声進行だった。

その頃の私と言えば、ギターでごく基本的なダイアトニックコードの一部をなんとなくそれっぽく弾くぐらいしかできなかった。

 

楽譜についても、当時の私(というかほぼ15年くらい前2010年ごろまで)は固定ドしか知らなかったのに「聴こえ方」はいわゆる「移動ド」の階名唱でしか聴こえていなかったので、両者の矛盾の板挟みになって楽譜を読むこと自体ほぼ放棄していた(楽譜から音を取ろうとしても頭痛くなっちゃうだけだった…)

 

そんな中、私だけでなく少なくない人が、どういうわけか「同じ間違え方」をしてしまう箇所があった。

「なかまーのーてーか〜らー」の「手から」の「か」が、何故かC♯になってしまう。

今回こうやって大袈裟に取り上げるのも、たまたま昨日人前で一人で歌ってみたら、当然のように間違えたままだったからで。

朗読会の「おまけ」で歌った『花をおくろう』

 

長いこと、この理由が私にはわからなかった。

私だけなら、まあ何か変な思い込みでもあったのかも、で済まされたかもしれないけれど、「その方が自然な気がする」という人が複数いた。

 

実は、どうやらこの理由は旋律だけを取り出して考えてもわからないことだったようだ。

上の私が採譜した楽譜に付けたコードは、実は音楽センターで発行している楽譜(現在はデータディスクになっている)などとは結構違う。

(そもそもキーが違うけれど、慣れている人ならそんなことは気にせずに比較できるだろう)

 

今回、いぶきのOBOGが1960〜80年代までの広い期間にわたる団員が一堂に会して「大うたう会」を開催する、ということで、私自身は当日別の用事があって現場には参加できないのだけれど、事前準備だけでも手伝えることがあれば、といろいろやっている中で、やっと「間違えて歌いやすい理由」に気がついたので、書いておこうと思う。

 

私は元々こんな理屈をあれこれ書き連ねるタイプじゃなくて、「いいじゃんこう響けば」でジャーン、と実際に音を出して終わり、という方なんだけど、まず下に該当箇所へ書き込んだのを出してみる(上の楽譜とはコード付けが違っているが)

※ここで、私が採譜した楽譜のコード進行が特異なものになっている理由を書いておくけれど、これは「無伴奏混声四部合唱の和声をなるべく忠実に反映させた結果」です。

 

・「なかま」の出だしがB♮になっている

・テナー、バスパートの音がEになっている→コードをつけるとしたら「Am」?(納得できてはいない)

 

この2つの条件によって、そこからA majorに至るまでの部分がまるで「マイナーに転調」してしまったように感じるのではないか?

それも、B♮とC♯(←この音自体は主旋律の中には1度も出てこないけれど、A majorの構成音にある)を含んだ音階=「旋律的短音階(メロディック・マイナー)」と思えてしまうのでは?

→だとしたら、「仲間の手から」にあたる部分のメロディーは…

 

ここからはもう「移動ド」で書くことを許してほしい。

だって私にはその方がわかりやすいから!

 

(in F)

フィソラーラーラースィラティー

(ファ♯ソラーラーラーソ♯ラシー)

 

2音目の「ソ」は、まだ「どっぷり旋律的短音階にハマってないから」?

短音階の中で「ソラティー」みたいな動きが入るなら、そりゃ「スィラティー」の方が自然じゃんよ⁈

…と。

 

一応、松永編曲の該当箇所だけ抜き出して貼り付けておく(採譜:会津里花…1979年頃に実際に使っていた「青焼きコピー」の楽譜から楽譜ソフトに写譜した;体裁がちょっと見慣れない感じなのはやや古い特殊なソフトを使ったから)

 

とはいえ、この説にもおかしなところはある。

>2音目の「ソ」は、まだ「どっぷり旋律的短音階にハマってないから」?

と書いたけど、本当にそうなのかな〜?とか。

 

面白かったけど、まだ完全に説明し切れたかどうかわからないし、逆に「そこまで深読みしなくても」なのかもしれない。