その場所に着いた



僕はそのビルを地上から見あげる

途轍もなく大きく

威圧感が襲いかかる


ビルの先端が空に向かって突き刺さる

青い空

銀色のその建物は 太陽の光で輝いている




その場所に僕はいた


3つの記憶



1つ目の記憶

ある夏の日 日本から親友がNYに遊びにきた

ビルの最上階、屋上展望デッキに出る



青い空の下に

マンハッタンが広がる

エンパイアステートビルが見える

クィーンズ・ニュージャージー

大好きなブルックリンブリッジ




2つ目の記憶

ある夜 好きな女性と食事に来た

ウインドウ・オン・ザ・ワールドと呼ばれるレストラン

ビルの106階と107階にある

大きな窓から見えるマンハッタンの夜景

その美しさに二人は言葉をなくす



3つ目の記憶


地下1Fにある広いホール

屋上展望デッキ・レストラン・オフィスに通じる
高速エレベーターがある

何百人もの観光客が
エレベーターに乗る順番を待ってホールに座り込んでいる

僕はエレベーターに乗りこんだ

「HELLO 、こんにちわ・・・」
世界中の言語が書かれている ドイツ語で中国語で・・・

人種や言葉の壁を超え 世界の人々を暖かく
ウエルカムしている象徴のように思えた



3つの記憶

もう現実には存在しない



大きな喪失感

願い 

そして祈り




2001年9月11日