$言葉をつむぐ☆りゅういち




朝 黒いモレスキンノートを開けて
青いペリカン万年筆で思念を書こうとした

書きつけようとした言葉の代わりに
歌が心の深いところから浮かんできた




いのち短し 恋せよ少女(おとめ)

朱(あか)き唇 褪(あ)せぬ間に

熱き血潮の 冷えぬ間に

明日の月日は ないものを





涙があふれてきて止まらなくなった
自分でもなぜだかわからなかった


志村喬さん扮する市民課長が
完成したばかりの公園のブランコを
揺らしながら口ずさむのがこの歌
黒澤監督の映画「生きる」

自分のためにだけに生きるのではなく
そばにいてくれる大切な人のために
まわりで支えてくれる友のために


誰かの喜びのために 心をこめて動く時

世界は動き始める 

世界は変わり始める







いのち短し 恋せよ少女(おとめ)

朱(あか)き唇 褪(あ)せぬ間に

熱き血潮の 冷えぬ間に

明日の月日は ないものを


いのち短し 恋せよ少女

いざ手をとりて 彼(か)の舟に

いざ燃ゆる頬を 君が頬に

ここには誰れも 来ぬものを


いのち短し 恋せよ少女

波に漂(ただよ)う 舟の様(よ)に

君が柔手(やわて)を 我が肩に

ここには人目も 無いものを


いのち短し 恋せよ少女

黒髪の色 褪せぬ間に

心のほのお 消えぬ間に

今日はふたたび 来ぬものを





ゴンドラの唄