$Blog作家★POP LIFE★あなたのために言葉をつむぐ・・・



 私が高校の2年生だった
 ある夏の日のことだった

 授業が終わり
 友だちと別れを告げ
 自転車をこぎ始めた

 学校の近くの小さな商店街を抜け
 通行量の多い国道まで来た

 信号待ちをしている時に
 突然、雨が降り始めた

 
 夏の夕立


 私は自転車に乗ったまま
 左足だけを地面につけて
 目の前の赤い信号を見つめていた
 雨に濡れながら

 
 雨が降っているのに
 急に私の身体に雨を感じなくなった

 
 なぜだろう
 と思ってうしろを振り向くと


 私に傘をかざしてくれている
 女性が立っていた

 若い女性だった
 私に優しく微笑みかけてくれている


 傘を私にかざしているので
 彼女は濡れていた


 
 目の前の信号が青に変わった

 高校生だった私は少し赤面していたと思う

 感謝の言葉を女性に伝えて
 自転車を全速力でこぎ始めた

 

 あの場所を今でも思い出すことができる
 雨の音と香りとともに

 あの女性の優しさは私の記憶のなかで残っている


 雨が好きな私

 その理由のひとつはこの記憶から来ている