Partita
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001

また雨か...
クルマが水を跳ねる音が
目覚めたばかりの裕子には
鬱陶しかった

アスファルトに流れる雨が
無遠慮に靴を濡らすのを
なにより嫌う裕子だったが
それだけではない。

雨を忌み嫌う理由は他にもある

あの頃の自分を思い出してしまうから...

そう、まだ20歳になったばかりのあの日

にわかに降り出した五月雨に濡れ
寒さに震えながら
裕子はアイツを待っていた..
約束の時間を1分でも遅れたら
許せないたちの裕子だったが
その日だけは、待った
待たなくてはいけない訳があったのだ

アイツは...しかし現れなかった

夏生の悪夢




夏生の悪夢

うまれて間もないころから
夏生は喘息に苦しんだ。
深夜唐突に咳き込むと30分以上それは続くものだから、両親も介抱で寝不足になる。

その夜も、3時を回った辺りで夏生の喘息が始まった。
6畳間に親子三人、川の字に
布団を敷き詰め真ん中に夏生は寝ていたのだが、丁度彼の枕元には、桐の整理箪笥があり引き出しの取っ手をカタカタ鳴らすのが夏生のお気に入りだった。止まない咳と取っ手のカタカタは隣に寝ていた父親の勘に障り、夏生!と小さな手をぴしゃりと叩いたものだから、夏生発の騒音は3つになり、始末に負えなくなった。

夏生は、まだ二歳だというのに親の機嫌が理解でき、この場を収める術も承知していた。
ぼくちんが隠れてしまえば、ことは収まる。布団にもぐるのもありだけれど、余計咳が煩くなりそうだ。

なにかが閃いた夏生は、両手を伸ばすと、下から二段目の引き出しを引っ張り出した。以前引き出しの下に潜って遊んだことがあったが、あれはアドベンチャーだった!

しかし、今夜は違った。
布団の厚みを計算しなかった夏生の頭は引き出した桐のせいで身動きが取れなくなってしまったのだった。夏生は生まれてはじめて目の前が真っ暗になった。

夏生の幸運

夏生の幸運

三月も前から楽しみにしていた遠足は、快晴だった。

みっつだけ持参できるお菓子を眺めにやにやしながら、てるてる坊主に両手をあわせた前夜の儀式が見事に功を奏したのだった。

幼稚園の遠足は母親も随行するから、夏生は仲良しの学くんのお母さんと長い時間一緒に過ごせるのがまた喜びでもあった。

なっちゃん、お菓子、なに持って来たぁ?

目を輝やかせながら、学くんが尋ねた。

えっとね~、鹿にあげる麩菓子でしょ、それからぁ、、、忘れちゃった...

え~鹿にあげるお菓子しかおぼえてないのぉ? なっちゃん、変なのぉ

だってぇ、たくさん鹿がいるみたいだけど、ぼくの鹿をみつけるんだ! 子分になったらお菓子あげるんだもん

学くんはその話に魅了された。

なっちゃん、ぼくも麩菓子欲しい。少しわけてよ

ヤダ、ダメ

なっちゃん、ずるいよ、ひとりだけ!
ぢゃあ、このガムぜんぶあげるから、麩菓子はんぶんちょうだい

う~...どおしよっかなぁ~
しょうがないなあ、ぢゃ交換してあげるよ

やったあ

岡崎公園に着くや、ふたりは鹿を追いかけて子分になるのをせまったが、なかなか受け入れそうな鹿はおらず、人間になれている筈の鹿たちもとうとうふたりの姿を見ると、逃げ出す様になった。

なっちゃん、ウソつきぃ

学くんの目には涙が浮かんだ。

仕方がないわよ、学~。
てか、鹿だって子分はいやに決まってるぢゃない...
お友達ならなってくれるわよ

ほんと、夏生。

うん、きっと

ふたりは、もういちど鹿の群れに近づいていった。つとめて、つとめて、フレンドリーに。

しかし、収穫はなかった。
ふたりの犯した失敗は挽回不可能だった。すっかりしょげかえったふたりに、母親たちは、さぁ、お昼をたべましょうよ、となだめた。そこは子供。おにぎりを頬張りながら、作戦失敗は完全に意識の外においやられていた。


帰宅した夏生が泥だらけのスモックを着替えるとポケットから何かが落ちた。学くんと交換した風船ガムであった。戦利品。なんとなくうれしくなって封を切り、いちまいガムを引き出した瞬間、夏生は狂喜し乱舞さえした。

あたり!が出たのだ

人生わるいことばかりぢゃない
夏生は、その日、悟った。


浦島次郎 〜第1章〜


むかしむかし
助けた亀につれられて
竜宮城にて放蕩三昧の遊興に
憂き身やつし、
とうとう玉手箱開けた瞬間
懲罰された曽祖父浦島太郎の
逸話を聞き、
戒めるどころか、
同じような好機がこないかと
次郎は毎日浜で過ごした。

おぉ!
傷ついた亀が打ち上げられた!
やつをたすけてやれば
俺も竜宮城とやらで酒池肉林!

まってたぜ、亀!



浦島次郎 〜第2章〜



怪我、、したんだね、亀くん
俺様が治してやるよ

と、用意していたガマの油を
次郎は傷口にすり込んだ。

もう大丈夫。
さ、はやく海にもどりなさい。

ありがとうございました!
次郎さん、竜宮城にいきたいのでしょう?
さあ、背中に乗ってください!

図星を刺された次郎は
たじろぎながらも、えい、ままよ、名まで知られたとあっちゃ固辞するわけにもいくまいて。

承知した、亀くん
竜宮城までつれてっておくれ

すっかり陽の落ちた水平線に
流れ星がひとつ落ち、次郎はひとりほくそ笑んだ。


浦島次郎 〜第3章〜



助けた亀の背中に乗った次郎は当然だがドキドキ心踊らせていた。曽祖父の太郎ぢぃちゃんもこんな風にファンタスティックな気分に浸っていたんだろうなあ...

次郎さん、海流がちょっと良くないです...もう3海里も進むと、いつもなら鯛やヒラメの舞い踊りに出くわすはずなんですがね、こんな逆流ではみな巣にひっこんでるでしょうよ
流れに負けないように、速度をあげますからしっかりしがみついててくださいよ~

わ、わかった...こんなんでいいかい?

次郎さん、もっと強く!
辞めろといわれてもしがみついててくださいな...どっかの首相みたいにね!

物知りだね、亀くん!
ぢゃ、こんな話、知ってるかい?
コイズミさんのジョークがナガタ町で受けてるらしいよ

俺はかつて、貴乃花に感動したっ!といったが、いまは、菅、ど~した? だよ

ぎゃはは~(笑) 次郎さん、それ受けます! 竜宮城ついたらぜひ乙姫さまに...

そのときだった!
凄まじい勢いで逆流してくる民意の波が、次郎たちに襲いかかろうとしていたのだった!



浦島次郎 〜第4章〜



次郎さん、手を離しちゃだめだ
死に物狂いで私につかまって!


亀井さん、ぢゃなかった
亀さん、亀さん、亀さあ~ん

海中の荒波は、ついに次郎を
飲み込んでしまった...

次郎はどんどん遠ざかっていく
亀に必死のよびかけをしたが
もう声は届きそうもない...

ダッチロールのなかで
自分からどんどん遠ざかっていく鯛やヒラメをみつめながら
曽祖父太郎翁の逸話を反芻しはじめたのだった

転がり込んできた竜宮城でのきらびやかな暮らし、乙姫や竜宮城の住人たちに甘え、みずからそこを辞するタイミングを引き伸ばし、いたづらに延命をはかったつけがうつつに戻った瞬間太郎を襲ったこと...

遠のく意識のなかで、次郎はすでに米粒ほどの小ささになった竜宮城にそれでも手を延ばすと、我、海中を遍路するなり...
そう譫言のようにつぶやくのだった




浦島次郎 〜最終章〜



遠のく意識の淵で
次郎は瞬時、夢をみた。

竜宮城は次郎の眼前で閃光を放つと跡形もなく消えてしまった。伸ばした手の先には、虹色に光る微細な魚たちが無軌道に行き交う。絢爛の後に残されたのはアナーキーな右往左往のみ。夢の中の次郎は、呆然とその様をみつめるしかなかった。

幼いころから曽祖父太郎の御伽噺を聞き育ち、竜宮城への憧憬は人生の意味と同義だった。
どうしても、煌めくその城を訪れ、あわよくば城主の座をすら射止めたい。善人の仮面を被り好機到来を待ちわび続けた人生。あと一歩の至近まで辿り着き、しかし見果てぬ夢の藻屑と消える...

次郎の目から一粒涙がこぼれ、瑠璃色の玉となった。次第に膨張をはじめ、ついには西瓜ほどの透明な塊に変わった。

次郎よ...
我欲を忘れ、妄執を捨てよ
そして二度と過ちを犯してはならぬ。
ワシとともに悔い改めようではないか...

瑠璃色の西瓜を覗きこむと、
嵐で生き別れた亀が優しい顔で次郎を手招きしていた。
声の主は、亀くん?

怪訝な顔をしておるな、次郎
ムリもない..
わしぢゃよ、浦島太郎ぢゃ


竜宮城の幻があった場所を
二匹の亀はいつまでも泳いでいた。















最終章 こころに架かる橋 fine

「なるほど! アキちゃん、やったな。ステキな物語だ」
ユキは、涙が止まらなかった。
「3人の友情と、大勢の人の協力と、そして新しい出会い、と。
 きっと、月はジョニーさんのことよ。そして渡り鳥がサキの劇団仲間。。」
「で、雪、つまり君が主人公だ」
そうかもしれないけれど、主人公は全員だ、とユキは思った。
ユキのケータイがなった。サキからだわ、と早口で言うと通話ボタンを押した。
「ワタシ、思わず泣いちゃったわよ。雪は、自分のカラダを削りながら
 刻一刻とカタチを変えて、雪形になって一世一代の物語を演じていくなんて」
「サキ、、ワタシも涙がとまらないのよ。朝も夕方もない世界。。。
 月に頼んで白夜にしてもらって、東の空の朝焼けと西の空の夕焼けがひとつになって
 雪形の姿を変えていくなんて。ちょっと悲しいけど、すごく美しいわ」
「でも、ユキ。冬になれば、また会える。いつでもすぐにひとつになれる!」
「ええ。頑張ろう、サキ。夢のつづきであいましょう、3人で。みんなで」
「みんな、って。。 あ、ジョニーさんも、ね!」

アキ、サキ、ユキ。3人のこころに架け橋がかかった。
その架け橋の上を、多くの人々が往来できるように、フォトアニメーションの完成に
3人とその仲間たちは全力投球していった。
安曇野のジョニーさんのアトリエからは、一日中ピアノの音色と、笑い声が聞こえていた。




夢のつづき 了

最終章 こころに架かる橋 4

「夢のつづき」 シノプシス  by Aki

雪には、友達がふたりいた。 それは、朝陽と夕陽だった。
もう何百年も何千年も3人の友情は続いていたけれど
3人で一緒に会ったことは一度もなかった。
朝陽と夕陽は、実は冬がちょっと苦手で目覚めるのも遅かったし、寝るのも早かった。
雪はその短い冬の光のおかげで、真っ白に輝かせてもらっていたが
朝陽や夕陽のおかげで、真っ赤に染まる時間がいちばん嬉しかった。
「ねえ、朝焼けさん。夕焼けさんとはほんとにあったことないの?」
「うん。でも、1億年に一回だけ会えるって聞いたことがある」
「ねえ、夕焼けさん。朝焼けさんに会ってみたくない?」
「うん。雪さん、いちど会わせてよ」
やがて春が来て、夏になって、雪は暇ができた。友達の頼みを実現するために考え続けた。
そしてまた冬がやってきた。
「やぁ、雪さん。久しぶりだね。元気そうじゃないか」
「カラダが解けてなくなるまで考えて、
 朝焼けさんと夕焼けさんが会える方法を思いついたよ」

「もったいぶらずに、はやく先を読んでくれよ」ジョニーさんがユキを急かした。
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