この間ちょっとした用事があり、のんきに、かつ陽気に電車にゆられていた。

浮かんでは消えるとりとめもない思考を放置しながら、

流れる景色をただぼんやりと眺める。



平日の電車はとても空いていて、椅子も座り放題かけ放題。

ほんのちょっとお行儀悪く足を放り出しても誰も怒らない。

平日の列車というものにはそういう自由な気配があった。



そんな時、とある駅から謎の外国人3人組が陽気な雰囲気を漂わせて乗り込んできた。

3人組は迷うことなく僕の座る1番端の席の隣に腰をかけて豊富なジェスチャーで会話を楽しみだす。



「オーケー」

「イェア」

「ヒウィゴー」

「ヘーイマイケル」

「ワオ、ボブ」

HAHAHAHAHA!



というノリノリな外国語を大きな声でかわしている。

なんだか異国の地に紛れ込んだ心地でおもわず「OH」といった肩をすくめる仕草をしたくなる。

ʅʃ    こんなやつだ。思ったんだけどこのジェスチャーの正式名称ってなんていうんだろう。




さてしばらくすると外人部隊は手に持った袋をゴソゴソと探るとチキンマックナゲットを取り出し、

マスクをアゴにひっかけるワイルドなスタイルでみんなで食べ始めた。

出来立てなのだろうか、すごく美味しそうな香りを漂わせながら豪快な咀嚼音をさせて食べている。



ソースの味はバーベキューだろうか、マスタードだろうか。

さすがに横目での観察に限界をきたし細部の情報がつかめない。



それにしても傍からみると僕と彼らの横並びの4人。

僕も一味に加わってみえているんじゃなかろうか。

なんならこのまま勢いで僕もマスクをはずしてナゲットを一つ摘んで会話に混ざってもいいんじゃないか。

そんな錯覚に陥るほど、もうすでに僕の心の中では彼らの仲間の1人だった。

それほどに彼らには吸引力があり魅力があった。

しかし現実ではもちろん僕は一味の一員なんかじゃないし、横目で盗み見ることしかできない気弱なジャパニーズだ。


しかしやつらは完全に楽しそうだし仲良さそうだし美味しそうだし。

僕は実に久しぶりに人に嫉妬した。



そうこうしているうちに外人部隊は

目的地についたのか、駅で颯爽と降りていった。

大きな図体をユラユラ揺らしながら楽しげに、そして誇らしく。


ふうわりとしたナゲットの香りを残して。





その日の夕刻。

とある某ファストフード店でチキンマックナゲットを購入する僕の姿があった。



あとは電車の中で一緒に食べてくれるラリパッパな仲間を見つけるだけだ。

そう思い僕は唇をそっと噛みしめた。