2ヶ月近くメールでのやり取りだけだった彼女から


突然に呼び出しをくらった。


あの海辺の燈台で話すことがある、と。


迎えに行っても


道中の車中でも


無言を貫いた


例の燈台に着くと車を降り


海側まで1人先に歩いて行ってしまった。


まだ日差しの眩しい夏の終わりだった


『私、がんなんだって。ステージ4』


唐突に爆弾発言。


『えっ』


聞き返すのがやっとだった。


無言の2人をウミネコの鳴き声が切り裂く


『既に全身転移。手術、不可って言われた。』


そんな・・・・・


『私たち、別れよっか』


見れば上を向いて瞳に涙を溜めている


『そんな、そんな別れ方、嫌だな』


精一杯の抵抗だった。


いきなり振り返ると涙を溢れさせて抱きついてきた。


『私だって・・・私だって・・・嫌だけどさぁ』


あとは言葉にならなかった。


それから病気はなんの妨げにもならないこと


お互いがお互いを必要としていること


それらを懇々と話して聞かせた。


溢れる涙を拭うこともせずに


真っ直ぐにボクの目を見て話を聞く彼女


あんな真剣な彼女、初めて見た。


2人で戦おう、病気と。


なんの慰めにもならない言葉を発してしまった。


帰りの車中も無言だった。


無理もない


おそらくどこか痛みもあるだろう。


それを堪えてのドライブだったに違いない。


部屋まで送り届けると


無言で降りて帰っていった。


かなり具合が悪そうだ。




それから3日間、音信不通だった。


さらに4日間。1本のLINEが。


『◯◯病院に入院しました』


比較的大きな病院だった。


ボクはそこへ向かうのだが・・・・・