複々線の広い踏切で


さっきからずっと止められたままだ。


踏切の向こうには彼女がいる


もはや諦めたかのようにスマホをいじっているようだ。


電車が轟音と共に左右から通り過ぎてゆく


やっと踏切が開いた。ボクが駆け出すと


彼女も駆け出してきた。


踏切の真ん中でやっと言葉を交わせた。


『元気だった?』


『元気だったよ、君は?』


そう尋ねるやいなやまた踏切が鳴り出した。


『どっちに行こうか』


『そっちにする』


ボクは彼女の手を引いて


さっきボクがいた方へ連れて行った。


踏切待ちの長い車列。


大勢の人や自転車。


子供達も。


今、ここには一瞬だけ人生の糸が


交錯した人々で溢れかえっている


人の数だけ生活が、人生が、ある。


そこにたまたまボクら2人も混ざっているのだ。


『ねぇ、どうしたの?』


その一言で我に返った。


『難しい顔してたよ』


『ごめん、考え事してた』


『私といるとつまらないの?』


『いや、そんなんじゃないんだ』


仕方なく、人生の糸の話をした。


『へぇそんなこと考えるんだ。。。。面白いね』


喧嘩、回避。ふぅ〜


今、うちらの糸、くしゃくしゃに絡まりかけたぞ。


知らんけど。