みなさん、こんばんは。

今回は、痛快な実話をお話しします。

去年の6月にアップした記事の再掲載ですが

どうぞお楽しみくださいませ。



名古屋大学近くの一駅先に、とあるダイニングバーがある。場所柄、大学生カップルがやたら多い。

独り身のボクはカウンターの片隅でビリヤード台が設置される午後8時を待ちながら大好きなマティーニのグラスを傾けていた。

ようやく午後8時。

時間になった。


ボクは料金と引き換えにボールとキューを預かった。


球を並べ、1人でナインボールを始める。


すると、カップルの片割れの女子がグラス片手に近寄ってそばに寄って来た。


彼女は、的確にボールを捌くボクのプレーに見入っていた。


そこへ、少しアルコールが入った彼氏が戻ってきた。

『ねぇ、お兄さん。どれくらいのキャリアなの』


初対面の挨拶が、それかよ。無視した。


『あのさぁ。今夜の飲み代賭けて勝負しない?』


あらま、随分と舐められたもんだ。


ボクは『俺随分飲むぜ。飯も食う。全部払えるのか?』


『そんな、払わないよ。余裕で勝つから』と余裕を見せる学生。


言ったな?


『ねぇ、そこの可愛い彼女さん。今の聴いたよね?』


『はい。彼、勝ちますから問題ありません』


なかなか言うじゃん。こっちも立場があるしな。


『じゃあ。やろうか。ナインボールでいいかな』


『望むところです。』


『じゃあ、こちらから先行させてもらうよ?』


『どうぞ。どっちにしろ、勝つのはボク。。。』


そのセリフを言わせる前にボクは最初のブレイクショットを決めた。


問題は9番ボール。


台上で暴れるボールたち。と、次の瞬間


『ゴトッ』


よく見れば台上から9番ボールが消えている。


『勝った』

『さあ、遠慮なく飲み食いさせてもらうね』


そう言うとボクはボールをケースに戻してカウンターまで持って行った。


生意気な学生にはキューさえ触らせなかった。


それからは、まあ、美味しい料理と美酒をたらふく頂き、会計の伝票は彼に回すよう依頼。

彼も悔しそうに泣く泣く承諾。

結局タダ飯にありついた。


ビリヤードで賭けるなんて、まだまだ10年早いわ。彼女の前での邪心ががキミを変えてしまったのだ。

ビリヤードの大会前、黒々とした髪の選手が、大会終了後、真っ白に髪から色素が抜ける。

それほどの緊張感と闘わなければならない。


キミはそれを知っていたか?


ボクはもう、初めてキューを握ってから20年のキャリアを持っている。


キミは幾つ?

酒が飲める学生なら20か21だよね。


残念だけど、キミが生まれた時からボクはビリヤード、やってるのさ。


相手が悪かったな。


ご馳走様でしたね。

今夜は格別にうまかった。酒も全て勝利の美酒だっからな。


もう少しここで腕を磨いたらまた、いつでもうけてやるさ。


但し、しっかり手持ちは用意しておくように。


また、食わせてもらうから(笑)


じゃあな。


これが、原因で彼女と別れるなよな。



あああ。。。


また、タダ飯ゲットしちゃったー(笑)


流石にもうないだろうな。



了。



これ、実話です。嘘みたいでしょ?

でも本当なんです。

よく、件の学生、逃げ出さなかったなと

まあ、彼女の前だしみっともない格好はできませんからね。

つまらないプライドってやつでしょうか。



古いお話しお読みいただきありがとうございました。