遡ること74日前。

というか、もう、ここへ来て74日も経ったのか。。。。

猛烈な勢いで引越しの片付けを済ませ

恥のかけらもなくルームツアー。

早速訪問して来た2人のケースワーカーさんが最初に目にしたのは

ボクの思い出の詰まったガラスのショーケースでした



ボクは、ゆっくりと腰掛けたお2人に向かって


聴かれるであろう、そして、それに対しての一番の模範解答を口にしました。


“全部、売れなかった品々の残骸です。“


普通、ケースワーカーさんは、受給者の部屋を観察する基準として


“換金できる贅沢品を所持していないか?“


あるいは、“換金できそうなら、そのように指導し、保護費を減額する方向に説得する“


というものです。


毎年、改訂される2冊のケースワーカー必携の書籍があります。


福祉課のデスクの後ろには、並べれるだけ並べた各年度のそれがズラリ。


一冊は最新版だと、『生活保護手帳 2021年度版』967ページ、¥2750。

もう一冊は、『生活保護手帳 別冊問答集 2021年度版』596ページ、¥2420


どちらかというと、1冊目は国からのトップダウンの指示書。

もう一冊は、実際の現場の過去事例を具体的に表した、1冊目よりはるかに付箋が多く貼られている

いわば、実践向けの想定集と言ったところでしょうか。


福祉事務所での面会時には、ケースワーカーさんは主に2冊目をドカン!とテーブルに持って来られます。

まあまあの威圧感、威厳、などなど。


その中に、冒頭にボクが先手を切って対応したように、いわば、現場での一問一答が事細かに想定され、

そこから主だった指示が出されてくるのです。


なので、着席早々、まるで鳩が豆鉄砲を食らったかのような表情でお2人、顔を見合わせておられました。


まあ、無理もありません。タネを明かせば、ショーケースのど真ん中のどでかく真っ赤なエンッオ・フェラーリ。


某、通販で、毎週購入を約2年。トータル、13万かけて手作りした10分の1の模型だからです。


未開封の箱のまま、まんだらけ、とか、その手のオタク御用達のショップでも100箱近くで約6万そこそこ。


一度組み立ててしまうと、その手のショップは、組み付け精度や、出来の悪さを根掘り葉掘り。


結局いちゃもんつけて、5、6千円でも買い取ってくれない現状です。


10kg近くて、運びにくく、やっとの思いで売りに行っても、無駄なだけ。


そういうのを知っているので、鼻っから売るつもりもなかったし、メルカリだのジモティだのにも出しもしませんでした。


でも、初めて見た人は、いかにも高級な模型だと感じるのは間違いありません。そして、売れそうな。。。。。


なので、訊かれる前に軽くジャブを1発。


高そうなグラスも、よく見れば全部文字の入った販売促進のノベルティのものばかり。


上の段のメガネも全部使い古し。


高そうな香水の瓶は全部空っぽ。


まあ、弟は、器用に木箱を彫り込んだし、父はこれまた実際に立体的に彫刻を完成させ、


で、一番指先が、実は、もう既に安定剤を飲み始めていた時期で、微かな震えが止まらない状態なボク。


小さなネジを、まず、ピンセットでつまめない。説明書の位置に数時間かかっても部品一つはめ込めない。


そんな状態で3年近くかかって完成させた、出来の悪い模型でした。それが、ボクの中の創作のDNA。


男3人で、一番不器用でした。


まあ、そんな出だしで始まった初回の支給認定調査訪問。


がらんとした部屋を一瞥して、何も言われる事なく帰っていかれました。


だって、その時まだ、エアコンはないし、テレビもそれに類する機械はおろか、音楽を聴けるような装置もない。


そう、コンポを持っていると、たちまち指導が入ります。“リサイクルショップ、紹介しましょうか?“などと。


ただ、薄いiPadだけは、何気にデスクの上のクリアケースの束の中に差し込んでありましたけど。


でも、問答集によれば、昨今、求職活動のためや役所のHP閲覧など、IT機器は一台までは所持が許されるように


数年前から改訂されています。


なので別に隠さなくても良かったんですけど、タブレットとはいえ、Apple製品ですから。。。。




さて、ここからが本題です。


もう一度、ショーケースの写真に戻って見てみてください。


木製の薄い板で出来た恐竜の模型、そう、右側の真ん中の段にあるやつです。


その足元、よく見て下さい。


というか、この写真を以前アップしたブログをご覧になった方から、


“。。。。。というより、足元の象?がどうも気になりますね。。。“とのご指摘を


実は受けておりまして、





この“小さな象“のエピソードを書くために


この“製作者“そう、勘の良い方はお気づきでしょうが、常滑からでは取材が出来ず、


こちらに来て、やっと“本人“から、その一部始終を聞き出すことができたのです。


しかも、ひと月に訪問していいのは一度だけ。という約束が福祉課との面談で決められていたので


7月に1回。8月も1回。そして9月。ようやくその話題を持ち出すことができ、本人も重い口を開いてくれたのです。


“父親“です。


加齢黄斑症で目が見にくくなり、彫刻刀を“置いて“から、


我が家ではいわば“タブー“になってしまった彫刻の話。


大学病院で眼球のど真ん中に注射を打つこと既に40回以上。


それが、いつしか、両目になり、


1回、¥15000する治療を続けてきた父。


いくら、高額医療費の負担上限額があって、超えた分は戻ってくるとはいえ、


一度は現金で立て替えなければならず、


更に、注射後、3日空けて地元の眼科で毎回確認診療を受けねばならず、


もう、夜は運転ができないレベルまで見えなくなっています。


そんな中、9月に入って、いつものように地元の眼科で、診療中、


父の後ろに立っていた母が身につけていた、あの、ブローチに先生が気づき、


“奥さん、素敵なブローチですね。どちらでお求めに?“と聞かれたのです。


“先生、これ、主人が彫ってくれたんですよ。もう、20年になりますけど“


そんな会話が始まったのです。すると先生が、父に一言。


“〇〇さん、これは良いことを伺いました。視力の回復にも、現状維持にも大変良いことです。

どうぞ、また、再開されてはいかがでしょうか?無理にとは言いませんが、それにしても凄い。“


と、予想だにしなかった会話になったのです。


これには父も母と顔を合わせて驚いたそうです。


そんなやりとりの熱が冷めないある日、ちょうどボクが実家を訪れた、というわけです。


引越して来て、3回目の訪問。


なかなか聞き出せなかったはずが、なんと、両親の方から、話題にしだしたのです。


先生にね。。。。


それから、ボクは父をけしかけて書斎へ押しかけ、使っていた道具や小物、きちんと整理された様々な


愛用品を見せてもらいました。


そして、何気なくリビングの壁のお手製の棚に並べられた“兄弟たち“


興奮冷めやらぬボクをよそにベランダで何やらゴソゴソ。


両手で持って来たのは。。。。。



次は少し写真多めで書いてみます。