22の頃。今から30年前の事。
当時、愛知県でも1番の激戦区であった名古屋インター入口の本郷交差点。
交差点の東西南北にガソリンスタンドが店を構えていた。
そのうちの1つのスタンドでボクはアルバイトをしていた。仲間は当時、AE86やワンエイティを乗り回し、スタンド前を直ドリしたりしていた。
まだスタンド前の道路には名古屋高速の高架もなく、どの店も繁盛していた。
最初は時給900円スタート。
しかし、オイル交換や水抜き剤。車検の獲得やタイヤ販売。来店するクルマは絶対にボンネットを開けさせ、互いが売り上げを競い合った。
ボクはメンバーのなかでも1番新人で、しかし年長だったので死に物狂いで売り上げをあげていった。
結果、毎月コンスタントに約40万オーバーを売り上げ、時給も1400円に跳ね上がった。
そのスタンドにマツダレンタカーが顧客としてついていた。
ボクはその店長と懇意になり、よく指名でレンタカーを任された。
ある時、1人の女子大生がアルバイトに入って来た。
男子ばかりの現場。
当然殺伐とその子を皆が狙っていた。
しかし、そうとは知らない彼女は、1番近い、後から入社のボクと自然に仲良くなっていった。
周りも段々諦め始め、何となくいい雰囲気になって行った。
ある日、くだんのマツダレンタカーの店長が、新しくロードスターのレンタカーが始まると教えてくれた。
まだ、出だしの頃の話題のクルマだった。
そして店長は、よかったら一日¥22000のところ、¥8000で貸すよと言って誘ってくれたのだ。
これにはボクもときめいた。
そして、例の女子大生にも話をし、良かったらドライブ行かないか?と思い切って誘ってみた。
反応が怖かったが、何と彼女はOKを出してくれたのだ!
バイトの休みを合わせて申請して、彼女の方から自宅の住所を教えてくれた。
当日、迎えに行くためだ。
それからマツダレンタカーの店長に連絡を入れ、クルマを確保してもらい、準備は整った。
毎晩地図を眺め、ドライブの最後に夕陽の見える海岸線を走るコースまで決めた。
そして当日。
ドキドキしながら彼女の自宅へ。
ドアをノックすると母親らしきひとの声が返ってきた。
ちょっと待ってね。と言われ、その場に立ち尽くすボク。
しかし、ドアは開かなかった。
彼女はかすれた声で、高熱を出して寝込んでいることをドア越しに伝えてきた。
ボクは決してドタキャンとは思いたくなかった。
何故なら、母親がボクの名前で彼女に取り次いでくれ、実際のところ彼女の体調の悪さが伝わってきたからだ。
ボクはお大事に、とだけ言い残してその場をあとにした。
階段を降りると目の前には今から始まるであろう素敵な時間の主役がポツンと止まっていた。
こうなったら仕方ない。
ボクは予定したコースを走り始めた。
市街地を抜け、三ヶ根山のスカイラインにも入った。
そこで、人生初めてのリアスライドを経験した。
今まで、FRのスポーツカーなんて乗ったことがなかったからだ。恐る恐るヘアピンを下りながら浜名湖方面へ。
そしてまさに時間ぴったりに国道1号線の浜名バイパスへ東から進入。長い直線道路を夕陽を眺めながら走り切った。
レンタカーの返却時間もあり、帰りはとにかく急いだのを覚えている。
半分、1人で良かったなぁとも思った。
こうして、千載一遇のチャンスを逃したボクは、彼女とは上手く行かなくなっていった。
そして迎えた卒業シーズン。
彼女も無事、アルバイトを卒業していった。
付き合うでもなく、訪れた自然な別れをただ、ボクは受け入れるしかなかった。
そしてボクもこのバイト先で正社員に引き上げられて、愛知県から岐阜県のグループのスタンドに出向となり、一人暮らしを始める事になる。
さらに、その見知らぬ街で出会った女性と人生を共にすることになる。
前のブログのSUBARUのディーラーは正にこの街の店でもある。
ひょっとしてバレたかな?街。