己に付きまとう望まぬ運命が


決して不幸とは限らない





なぜならば



望み過ぎて不幸になった者達を多く見てきたから




彼らは


得たものの代わりに何を失ったかすら解らずに


ずっと欲に振り回されていた







蓬莱山の宝玉を持たずとも


煌びやかな門や屋敷を構えずとも




民がひれ伏す富や権力を奮わずとも





簡単に得られる


ささやかな幸せというものを


私は知っている






慎ましく生きる人生


心の平安


それこそがこの世の至宝






だから私は


泥の中でも咲く花になりたい





決して華やかな人生ではなくとも


人知れず荒れ野に咲く一輪の花のように


清々しくありたい






奢れる者よ


私の身体を踏み潰せばよい





私にそよぐ風の


その清々しさは


この命が終わりを迎え



想像を絶する長い時がたっても




また変わらずに他の命が引き継ぎ


清々しい風にそよぐ花として現れるように





凛として宇宙の鼓動と呼応し続けるのだから











九頭龍