Q1.日本は火星12の飛翔を追跡できていたのか
A
今回の火星12の発射後に、安倍総理は、ミサイルの飛翔を日本政府は最初から把握していたと説明しました。これに対して懐疑的な意見が聞かれましたが、これは安倍総理の説明が正しいと考えられます。日本は、弾道ミサイル発射の第一報を米国の早期警戒衛星(宇宙に配備されている高精度の赤外線センサー搭載衛星で、ミサイル発射の熱を探知する)から、米軍を通して受け取ります。その後、日本海に展開する海上自衛隊のイージス艦や日本各地に置かれている航空自衛隊のレーダーサイトで継続的にミサイルを追跡する仕組みを既に構築しています。
また、ミサイルの飛翔を把握していたからこそ、日本政府は火星12が日本列島を超えてくることを予測し、Jアラートを出せたわけです。飛翔を把握していなければ、これは出せません。
Q2.なぜJ破壊措置が行なわれなかったのか
A
破壊措置というのは、自衛隊が我が国に飛来してきて、なおかつ落下する危険がある弾道ミサイル等を実力をもって破壊する措置のことです。実は破壊措置に関しては、北朝鮮情勢を考慮して昨年来防衛大臣から破壊措置命令が常時発令されている状態です。そのため破壊措置はいつでも行えます。
ではなぜ今回は破壊措置が実施されなかったのかといえば、破壊措置は先述した通り「弾道ミサイル等が我が国に落下してきそうな場合」に行なわれます。つまり今回の火星12は我が国の遥か上空を通過して、我が国に落下してくる危険がなかったために、破壊措置は行なわれなかったのです。
Q3.今回の火星12は日本のPAC-3やSM-3では迎撃出来ないのではないか
A.
今回の火星12は「中距離弾道ミサイル」と呼ばれる部類で、射程はだいたい3000kmから5000kmくらいのものです。この火星12は北朝鮮自身も暗に示している通り、グアムを狙って開発されたミサイルです。つまり日本を狙っているものではありませんので、グアムを集団的自衛権で守る以外の場面ではそもそも迎撃する必要がないのです。
また一部から、「今回の火星12の高度が550kmで、SM-3は500kmしか上がらないから迎撃出来ない」という声も上がりました。しかし、たしかにSM-3の迎撃高度は500kmと言われていますが、実際には正確な数値は分かっていません。また、550kmに対して500kmではという意見は、ミサイル防衛の仕組みをあまり理解されていないのではと思わざるを得ません。SM-3は必ずしも、弾道ミサイルの飛翔の頂点部分「のみ」を狙っているわけではなく、その前後周辺の広い範囲を狙うことも当然ながら可能です。つまりこの議論は全く意味がないと言わざるを得ません。
PAC-3に関しても同じです。PAC-3の迎撃高度は10kmと言われていますが、PAC-3の担当は地上に向かって落ちてくる弾道ミサイルの迎撃です。つまりまだまだ高いところを飛翔する弾道ミサイルを迎撃するものではありません。ですので今回の列島越えをする火星12自体をPAC-3で迎撃することはあり得ないのです。
ただし、今回全国にPAC-3が展開しているのはなぜかと言えば、弾道ミサイルが空中で何らかの不具合が起きて、地上に落下してきた場合に備えての、万が一のため措置なのです。
(我が国のミサイル防衛態勢の図解。SM-3は弾道ミサイルの飛翔の高い部分、PAC-3は低い部分を狙う。図は平成27年版防衛白書 http://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2015/html/n3113000.html より)
