泡盛の飲み方はいろいろあるけれど、やはり古酒をちびちび飲むのが一番だ。

沖縄に移ってきたばかりの頃、那覇栄町の料理屋でたまたま注文した瑞泉酒造の古酒との出会いが衝撃的であった。四十三度の強い酒なのに舌先を全くアタックしてこない、まろやかさ。それでいて、喉の奥に流し込んでも三十秒くらいずっと、お米の芳醇な甘さが口の中に漂い残るのだ。その奇跡的な作品に本当に感動したものだ。

古酒(クース)とは、大雑把に言えば、全量を三年以上貯蔵した泡盛のこと。強い酒特有のピリピリしたアルコール感も長年寝かせれば、まろやかになる。

この「まろやかさ」を科学的に分析すると、化学変化と物理変化の2つで説明できる。

化学変化とは、泡盛が容器の中の空気にじっくり触れながらガス交換(呼吸)によって香味成分を変化させ、芳香を増すもの。

物理変化とは、アルコール・水の分子塊が長年かけてクラスターとなり、刺激源のアルコール分子を水分子がカバーすることで味が丸くなるもの。「クラスター」っていう名前、嫌ですけど。

(分かりにくくてごめんなさい。今後、本ブログで整理して丁寧に説明していきます!)

 

さて、前回ご紹介した「琉宮の邦・海底酒」を飲んでみることにした。

 

 

本部町の山川酒造は、「古酒のやまかわ」として知られるように、1946年創業以来、特に古酒作りを重視してきた。公式HPでも以下述べられている。

https://www.yamakawashuzo.com/

 

「創業から70年以上経った今も古酒を造り続けることができているのは、『どんな時でもとにかく頑張って古酒(クース)を寝かせておきなさい いずれは古酒の時代になるから』という創業者の教えを忘れることなく着実に古酒を造り貯蔵し続けたからです。

それは、手間暇がかかるが他の蔵が造っていない長期熟成「古酒」は、価値が高く年月を重ねるほど誰も味わったことのない味になり、小さい蔵でも勝負できる時代が来るということがわかっていたからこその教えだったのでしょう。』

 

15年未満の古酒は「珊瑚礁」、15年以上熟成させた古酒は限定秘蔵酒「かねやま」というブランドで有名。いつか「かねやま」を堪能してみたい。

さて、この有名でない、変わりもの「琉宮の邦・海底酒」。

蓋を開けて、瓶に付着している珊瑚がこぼれないように、静かに注ぐ。

飲んでみると、トウモロコシを燻ったような香りを伴う甘さが口いっぱいに拡がる。それでいて余韻は短く、さっぱりしている。

 

本ブログ「泡盛マイスターの島酒漫談」は始まったばかりだ。

このご時世、大人しく家飲みをしている方々も多いと思う。島酒のつまみとなるようなお話をしていきたいと思っているので、お付き合いいただきたい。

(泡盛マイスターを目指す方にも、純粋に泡盛をゆっくり楽しみたい方にも、お楽しみいただける内容作りを心掛けますので、どうぞよろしくお願いします!)