マルセロさんの独白(私の心の声つき)。
「お袋は騎士団に所属していません。
お袋の一族は代々裏稼業で生計を立てていました。親父も…、いわゆる裏側の人種です。
南米に入植した父方の曽祖父は柔道家でありながら、ヤクザ族のボスだったと聞きました。」
ヤクザは一族じゃないと思う。
あれ?一族であってるのか?
「親父は依頼者として、まだ人間だった頃のお袋と出会いました。お袋が言うには、親父の一目惚れらしいです。
言い寄る親父に、お袋は自分が人外の一族であることを告げたそうです。
だけど、親父の気持ちは変わらなかった。親父からしたら、交際を断る馬鹿げた口実だと思ったんでしょうね。」
依頼=殺し、だね!
てゆーか、ママさんのカミングアウトがバカすぎる。
「いつしか親父の想いは通じ、2人は結ばれました。だけど結婚は許されなかった。
お袋の一族は何よりも血の存続を重視していました。非適正者との結婚なんて論外だったんです。
長い裏稼業のせいもあって、宿主一代あたりの寿命が短かったんだと思います。」
適正持ちってどうやって分かるんだろ?
検査すりゃ良いんだろうけど、騎士団に属してなきゃ検査しようがないよね?
「准尉は適正持ちの識別方法をご存知ですか?」
ナイス質問♪
私は首を傾げて応えた。
「金毛種は世襲しないそうですからね。
宿主が見ると、同じVの適正持ちは瞳が光るそうです。違うVの宿主や適正者同士が見ても光りません。
准尉が見ても俺の瞳は普通ですよね?お袋には俺の瞳が光って見えるらしいです。」
「他にも古くからある方法として、入口に宿主の血で染めた布を垂らしておく、というのもあります。
布が動けば適正者、動かなければ非適正者。この方法で分かるのは適正者かどうかだけ。適正対象のVまでは分かりません。」
そうなんだ。勉強になった!
「俺は…、俺は、親父に会った事がありません。」
ん?どした?
「親父は、結婚の許しを貰いに行き、その場で祖母に引き裂かれて死にました。
その直後、祖母はお袋に撃ち殺されたそうです…。だから俺、親父にも祖母にも会った事がないんです。」
なんと壮絶な家庭環境!
マルセロさんが普通に育ったのって奇跡なんじゃない?それとも実は普通じゃない!?
「その時、お袋は既に俺を宿していました。
祖母のドッペルゲンガーからVマイクロムを受け継いだお袋は、一族を根絶やしにした後、決死の覚悟で父方の祖父に保護を求めました。
裏世界で名の知られた殺し屋達の首を手土産に…。」
マルセロさんのお母さんに一生出会わない、いや、ニアミスすらしない事を心から祈ります!
「そして18年前、俺はヤクザ族の跡取りとして生を受けました。お袋はいま、ボスの、祖父の右腕です。」
確かに常人なら悩む生い立ちだけどさ、マルセロさんにはもうそっちの道しか残ってないじゃん。
何を悩む必要がある?あれ?なんで騎士団にいるんだろ?
「問題は血です。俺は…、お袋と同じVの適正を持っています。
お袋は一族最後のヴァンパイア。お袋の一族は、いわゆる女系血統で、女性にしか世襲されません。
これまで一度だって男が宿主になったことはないんです。」
それって、マルセロさんはヴァンパイアにならなくて済むってことじゃね?
「血の呪いによって、適正を持った一族の男子は…生後20年目に必ず死ぬ。
死因も決まっています。急性脳動脈瘤破裂です。これが一族の歴史に男性宿主が存在しない本当の理由。
これは遺伝子中枢に書き込まれた情報らしく、環境によるDNA変化の影響も受けません。」
マルセロさんのこと、超現実主義者だと思ってたけど、本当は呪いを信じちゃう人だったんすね!
「この呪いには別の側面があります。…確定された条件以外では絶対に死にません。
俺は、2年後の2月8日午前4時02分ちょうどに脳動脈瘤破裂で死にます。」
それって、期限までは「不死身」ってことだよね?
もしかしてマインを回避する必要なかったんじゃね?