「タタさん。申し訳ないですが、その…サクアモイ?も、その詩も、自分達には心当たりがありません。あなた以外に、えっと、サクアモイの言葉を話せる人を知っているなら、居場所を教えてくれませんか?」

 マルセロさんが私に代わってズバッと言ってくれた。貴方も優れた代弁者です!

 

 それよりも、背中の傷をどうにかしたい。


「私の他に、山と風の代弁者が居ます。山の代弁者の方が近く、小さな太陽の沈む先に真っ直ぐ、3つの昼と2つの夜で行けます。」

 変わった言い方だけど、西南西に2日半進んだ距離、と理解できる。移動手段は指定されていないけど、徒歩なのか、水泳なのか…。


「ありがとうございます。ふぃに道案内のお礼を言っておいてください。それと、気をつけて帰ってくれ、と。」

 チグハグな会話をしている間、ふぃはずっとニコニコだ。

 

 マルセロさんがふぃの頭をナデナデすると、ふぃは嬉しそうに彼の手をベロベロ舐めた。
 ふぃが舐めるのは愛情表現らしく、短い道中にも関わらず、私達は何度も舐められた。

 

 最初はビックリしたけど、ふぃに舐められた所からは花ような香りがするので私は気にしなくなった。

 どこかで嗅いだことがあるんだけど、どこだっけ?
 マルセロさんはあんまり好きな香りじゃないのか、舐められるとすぐに洗う。


「マルセロ様、フィーリャは選ばれし民です。離れる事はなりません。」

 またRPG度が増した。
 てか、選ばれたのは私じゃなくて、そっちかぃ!


「いや、そう言われても自分達は基地に戻らなければなりません。それに基地は敵襲を受けて戦場と化しています。そんな危険な場所に子供を連れて行けるわけないでしょう!」

 マルセロさんの現実的な発言が、再び上がりかけたRPG度をみるみる中和する。



「金色の娘、いざや、いざや。
 サクアモイは喜び。
 サクアモイが喜ぶ。
 水よ、山よ、風よ。
 娘を誘い星へ。
 道は1つならざりや。

 娘の歌は星へ。
 道は1つならざりや。」

「私が代弁者に選ばれた時にいただいた歌です。金色の娘とは、そちらのお方ではないでしょうか。ならば、フィーリャが居なければ、目指すナンベイキチとやらには辿り着けないでしょう。」

 ッタタさんは、マルセロさんを無視してRPG度を上げる。
 私としては、重要な鍵にして貰えたからッタタさん案に乗りたいけど、状況的にマルセロさんを支持したい。

 

 今さらだけど、ふぃの本名はフィーリャらしいです。発音があってれば…。


「マルセロ様、感じておられるのでしょう?ナンベイキチが決して近くないことを。頭で考えるのではなく、感じたままに動きなされ。あなたのひいお爺様がそうであったように。」

 ッタタさんはあくまでもRPGサイドで攻めてくるつもりだ。
 対するマルセロさんは、少しだけ無精髭の生えた顎を撫でながら目を閉じている。

 

 こりゃ、トドメの一言を熟考してますね!