女神とマルセロが消えた。
消えたのは2人だけではない。
HCマインの爆発により発生した黒い球体は、触れた全てを消し去ってしまった。
女神達がいた小さなクレーターはもうない。
代わりに不自然に抉れた大地がある。
その大地は地下3mほどの深さを中心に、ちょうど直径20mの球体が入る形状に抉れている。
時おり穴の奥から女性のすすり泣きに似た音が響いてくるのは、吹きすさぶ風が起こす悪戯か。
モントリーヴォがこれまでの戦場で見たHCマインは、せいぜい直径5mの範囲を消滅させる程度だった。
それらに比べると今回のマインは別次元の威力だ。今はまだ地雷型しか確認されていないが、もし同じ規模で即時爆発可能なミサイル型が開発されたら、と被害を想像した伝説の男の顔から血の気が引いていく。
「マルセロォーッ!女神さまぁーっ!」
姿の見えない2人を呼ぶベアトリスの声は、無情にも穴の奥に消え、程なくして返ってきたのは、すすり泣きに似た音だけだった。
眼下に広がる光景から常識的に判断するならば、2人の生存はまずあり得ない。周囲に2人の登録生体情報が見当たらない事をモントリーヴォも承知している。
しかし、状況が2人の死を明確に語ってもなお、彼はその目で結論を見るまで、2人を「死亡」扱いするつもりはない。
モントリーヴォは、消えた2人のステータスを「消息不明」に切り替えた。
「今は任務中だ。予定通り拠点に戻って二階堂姉妹の情報を集めるぞ。座標は2人にも送ってある…。あいつらはきっと拠点に戻ってくる!」
モントリーヴォは、最後の言葉だけ特に力を込める。
一行は光学迷彩に身を包むと、景色の中に消えた。
まだ2人の死亡が確定したわけではない。