王国騎士団 VS アメリカ軍

 これまでチラチラと見え隠れしていた「人類」は、アメリカ軍のことだった。
 一介の女子高生がアメリカ軍と戦って大丈夫なのか、という疑問を抱きつつも、私は空を飛んでいる。

 更に言うと、2本のランスをアメリカ軍のド真ん中にブッ刺そうとしている。


《姫様!センシングパルス、を、感知、しました、ぞ。リンクモード、ON、に、します、のじゃ。》

 爺が前触れもなく言った。

 相当ヤバイ状況らしく、疑問系で聞いてくるのではなく、イキナリうなじを刺された。

 たぶん針を刺されたんだと思う。
 その後、針と思しき物体は、ニュルンっとした感触を残して体内に入り込むと、ニョロニョロと頭に向かって移動を始める。
 針が耳の後ろに来た辺りから脳がゾワゾワしたけど、私は白目を剥きながらも耐えた。

 自分のぬいぐるみに刺されるのって、プチDVだと思うのは私だけでしょうか。
 せっかく「ぬいぐるみ型」なんだから、リンク方法を「ちゅー」にするとか、メーカーは可愛らしい方向に持っていく努力が必要だ。


 程なくして、私と爺のリンクが完了した。

 ホログラムが頭の中に投影される。

『おぉ!なんか色んな情報が出てきた!情報多すぎてワケわかんねぇ!』

《姫様、ご安心を。すぐに慣れますのじゃ。》

 爺が普通に喋った。というより、脳内に響いた爺の声は滑らかだった。


《音声にしなければスラスラですじゃ。姫様の感覚情報を追加表示しますぞ。》

 また情報が増えた。
 増えたのは主に私の聴覚から得られた情報のようだ。


"飛来物解析…「弾丸」…平均初速733m/sec、サーフェイス27、射出ポイント7、1sec予測270発。…97%回避ルート表示。"

 視界に青色の線が表示された。
 青い線はハチャメチャながらも、赤い線のレーザーコンパスが指す先に向かっている様に見える。


《姫様、魅惑のボディをお借りしますのじゃ。》

 どこで学習したのか、爺が変な事を言い出した…、と思ったのが先か、起こったのが先か、身体が勝手に動き出す!

 右へ、左へ、上へ、下へ、時にはスピンしてまで、私は青い線に沿って飛ぶ。
 その飛び方は、明らかに弾丸を回避していた。それまでシールドを直撃していた弾丸が掠る程度に軽減されていることからも分かる。


『爺が私を操作してんの?』

《そうですが、なにか?》

『べ、別に…。』

 本人よりAIのが上手く飛べるのは、果たして良い事なんだろうか。
 そんなこと考えていたら、ピリピリと空気の裂ける音が聴こえた。


"センシングパルス射出確認…射出数6…射出ポイント4、………68%回避ルート表示。"

 青い線の軌道がよりハチャメチャに修正され、所々「破線」に変わった。


《68%とは…なかなか厳しい条件ですじゃ。》

 ハチャメチャに飛んでもピリピリ音は消えない。

 

 

 音の正体が見えないまま、間もなく「破線ゾーン」に入る。