ロズウェル事件。

 1947年7月、アメリカ合衆国ニューメキシコ州ロズウェル付近に墜落したUFOが、アメリカ軍によって回収された、と言われる事件。

 この事件の核心は、UFOの正体にある。
 本来のUFOとは単に所属不明飛行物体の事であり、必ずしも地球外知的生命体の飛行型移動機械を指す言葉ではない。

 果たして、回収されたUFOは誰しもがその言葉から連想する物体そのものだった。

 ロズウェル事件の背景には地球外知的生命体の姿があったのだ。
 正しくは、アメリカ軍に回収された、ではなく、UFOに乗っていた地球外知的生命体の方からアメリカ軍へ出向いた、となる。
 この時から現在に至るまで、アメリカ軍は地球外知的生命体のテクノロジーを基盤に技術開発を行い、表向きは非常に緩やかに技術革新を進めている。


 この地球外知的生命体は、ロズウェル事件以前に何度も地球を訪れている。
 初めて彼らが地球に訪れた時、地球はやっと人類文明の兆しが見え始めた頃だった。
 彼らはテクノロジーを駆使する事で自らの神格化し、地球人類の精神支配に成功する。

 以来、彼らは「神」だ。

 その偽りの神は、未だに世界三大宗教の2つで「神」と呼ばれている。
 断言する。大多数の人が信じる神は、決して人類を救いたもう存在ではない。
 愛を片手に携えた矛盾だらけの争いが、世界各地で続いていることが何よりの証拠だ。

 彼らが神になってまで地球人類に固執する理由は、人類の身体構造にあった。
 加工しやすい哺乳類型の知的生命体というだけで極めて稀である上に、多くの人類が外宇宙由来の寄生生物に対して耐性を持っており、これら2つを兼ね備えた地球人類は、他の惑星で活動する労働力のベース体として非常に優秀な素材なのだ。


 侵略者である「神」の魔手から古代人類を救ったのは、他でもない、ヴァンパイア達だった。

 時はまだ赤毛種が生き残っていた時代まで遡る。
 赤毛種の超感覚によって神の本質を知ったヴァンパイア達は、神と呼ばれていた者達に宣戦を布告し、世界各地で神の支配から人々を解放していった。
 世界各地に残る神同士の戦いや神殺しの逸話はこの時の痕跡だ。

 しかしヴァンパイア達の行動は、思惑通りの結果を生まなかった。
 人々は解放されたことを嘆き、神に救いを求めて祈りを続ける。神から与えられていた紛い物の安寧は、すでに人々の心の拠り所として奥深く根付いてしまっていたのだ。

 ヴァンパイア達が神に仇なす「闇の眷属」と見なされるようになるまで、そう時間は掛からなかった。