「私1人で行く!」
どーも、金髪モードの私です。
ギリで間に合いました!
恥ずかしいのと、説明が面倒なので、髪をフード付きコート状にして顔と身体を隠してます。
あと、まだ右腕の肘から先を探してるので見つけたらVINEください。
「さくらっ!なに言ってんの!?」
「不死身の私が適任じゃん♪」
蛙がプールの塩素消毒槽に入ってしまった時のように慌てる知子に、私は笑顔で言った。
話を続けたい私をよそに、D64管制室の面々は、口々に、どこから来た?とか、さっきの死体がない!と、言って騒ついては、私をイラつかせる。
できる女子だけは状況を理解したようだったが、理解した内容が自分の限界を超えてしまったらしく、ケタケタと笑い始めてしまった。
「私が行く!私が1人で南米基地まで飛んでゲートを起動してくる!」
場を収める事が面倒臭くなった私は、今まで出した事がないくらいの声量で力強く宣言した。
私の声にD64管制室内は水を打ったように静まり返る。
「っ!だけど、さくら!…」
全員の静かな視線が集まる中、まだ何か言いたそうな知子を、私は左手で制した。
知子が何を言いたいのかは分かっているし、自分が何を言っているのかも分かっている。
私は管制室の中央までゆっくりと進んで立ち止まり、ふうっと息を吐いてから顔を上げ、管制室の面々を順番に見る。
できる女子を除く全員の視線が私に集中していることを確認してから、できる限り力強い口調で言った。
「私なら無傷で南米に行けるかもしれません。それには皆さんのご協力が必要です!」
ーーーーーーーーーー
「単刀直入に言います。あなた達の血をください。」
混乱が収まっていたD64管制室は、私の下手くそな言葉選びのせいで再び混乱してしまった。
「彼女は…田中准尉は、金毛種です!」
見かねた知子がフォローに入る。
彼女のよく通る声のおかげでD64内は落ち着きを取り戻した。
知子は、彼らに再生した身体を見せようと思ったのだろう、私の身体を覆い隠している金髪コートを掴んだ。
こ、これは…!
今日も初対面全裸の匂いがする!
今回こそは何としても阻止してみせるっ!
「さくらっ!なんで抵抗するの!?」
「ダ、ダメ!絶対!」
この金髪コートだけは捲らせない!
ディフェンス金髪とアタック金髪の2軸スタイルで知子を迎撃だ!
攻撃は最大の防御なり!攻撃すべし!すべ…し……?
色々と面倒臭くなった知子に、下から水攻めされて簡単に金髪コートを捲られちゃいました。
今回も初対面全裸シチュ達成です!
しかも、まだ右腕が見つかってないから髪を巻きつけて隠すしかない。
無駄にエロいっしょ、これ?
右腕が途中からないけど。
「あ…全裸だったんだ…ゴメン。言ってよ!」
「だからダメだって言ったじゃん!」
毎度のことだけど今回は少し人数が多い。もう泣くしかない。
「あの、それで何がおっしゃりたいんですか?」
今日は色々と得をしているちょびヒゲ隊長が、こちらを見ていないアピールなのか、そっぽを向いたまま言った。
当初の目的を思い出した知子は、おほんと咳払いをしてから話し始める。
私はもう身体隠して良いよね?
「田中准尉は類稀なキュア…再生能力を持っています。先ほどまでモニターに突き刺さっていたのは彼女です。あの程度の負傷ならば、彼女は再生に吸血を必要としません。」
知子は、私、モニター、私、の順に指差しながら説明していき、そしてこう締めくくった。
「今回はEAX転送により強制的にV濃度が下がってしまうため、皆さんの血を分けていただきたいのです。」
管制室の面々は、至極納得のいった顔をしている。
さすが知子さん。名門井伊家の末裔は違いますな。
だけどね…。
「井伊軍曹の説明でだいたい合ってます。だけど、血だけじゃ無意味です。Vマイクロムが重要なんです。どのVにするかは選ばせてください。あと…直接吸血します。」
「はぁ!?さくら、あんた、なに言ってんの!?」
知子が反応したのは、選ぶことにだろうか、それとも直接吸血にだろうか。
まぁ、どっちでも良いけど。
「皆さんの真なる姿と特性を教えていただけませんか?」
「………。」
誰も反応してくれなかった。
状況の掴めない私に知子が言った。
「さくら……騎士団員全員が宿主ってわけじゃないんだよ…。」
6名のD64管制スタッフに、宿主は1人もいなかった。
知子が私の肩を2度ポンポンと叩く。
騎士団員が全員ヴァンパイアの血縁者であることに間違いはないが、それは全員が宿主である事を意味しているわけではない。
血縁者であっても全員が適正者ではないし、もちろん宿主でもないのだ。
そもそもVマイクロムの数に対して団員数が多すぎる。
私は今の今まで、その事に気付いていなかった。
同時に、南米基地にいる要救助者全員が、EAXで避難できない事実を叩きつけられた事になる。