「本人の希望なら構わないだろ。金毛種お断りって軍規はないからな。能力は霧島中尉のお墨付きだろ?俺も書いてやるが、自分の他にあと3通、推薦状用意しとけよ。こればっかりは規則だからな。」
「はっ!ありがとうございます!」
霧島先輩はキョドる私の横でビシッと敬礼をした。その横に私もヘナッと敬礼っぽいのを並べる。
アウエンミュラー大将は、私の入隊を「問題なし」と判断したが…。
「まずは敬礼の仕方からだな!」
と、豪快に笑った。
楽しそうな大将に敬礼したままの先輩が口を開く。
「僭越ながら…私はまだ少尉です。推薦状は中尉以上ではないのですか?」
「あぁ、霧島くんは、先日のラ…、任務の功績が認められて中尉になったよ。辞令届いてないか?」
「…いえ。まだ、いただいておりません…」
言ったそばから、先輩専用の☆KimoKawa☆さきゅちゃん型ぬいぐるみ端末にメールが届いた。
今送ったのだろう。大将がしたり顔で笑っている。
そんな事よりも、さっき「先日のライブ」って言いかけたよね?
「ありがとうございます。誠心誠意、勤めさせていただきます!」
「相変わらず真面目だなぁ。よし、中尉!田中くんが入隊した際は、君に預ける。」
「はっ!……えぇ!?本気ですか!?私の隊は…その、あれで、それで…これですが?」
先輩は再びビシッと敬礼し直した、と思ったら、素っ頓狂な声を上げて、急にしどろもどろし始める。
こういう仕草の先輩はまじ可愛い。同性だけど付き合いたい!
「おう。本気だ。よろしくな!まだ端末余ってるだろ?入隊が決まったら渡しとけよ。がはは!」
アウエンミュラーは、何か言いたそうな先輩とその隣りでキョドり続けている私を出口に押しやると、笑いながら手を振った。
プシューと音を立てて閉じたドアの前で、先輩と2人、フリーズしたのは言うまでもない。
「はぁ…。帰りましょうか…。」
フリーズを解かれた先輩が、敬礼したまま上げていた右手をため息と共に下ろすと、力なく言った。
ーーーーーーーーーー
「これで入隊手続きは全てです。これからよろしくお願いします、田中准尉!」
「はい。こちらこそよろしくお願いします。」
私はモニターに映るふわふわ可愛い系のお姉さんに深々と頭を下げた。
体力テストあったらどうしよう、と心配していたけど、入隊は書類審査と各種生体情報の登録だけで終わった。
ぶっちゃけ一歩も軟禁部屋から出てません。アウエンミュラー大将の推薦状がある時点で99.9%決まってたっぽい。
通信を終えると、警備室の皆さんと爺が盛大に祝福してくれた。
入隊記念に、と平林さんの奥さんが手作りしてくれた化粧ポーチを貰ってしまいました。
デフォルメされた私の女神姿が刺繍されてて、キラキラしてるし、チョーカワイイっす♪お化粧しないけど。
「さくら、入隊おめでとー☆」
警備室の皆さんと談笑していると、けしからん乳の井伊さんが乳を揺らしながら飛び込んできた。
飛び出す乳が邪魔で見えなかったけど、他のViPメンバーも順に入ってきているようだ。
「田中准尉!今日から私の小隊の一員だ。よく励むように!」
飛び出す乳を押しのけた先輩が、笑顔に綺麗な敬礼を添えて言った。
敬語ではない事が、入隊を改めて実感させてくれる。
私は霧島先輩、改め霧島中尉に教えて貰ったばかりの敬礼を返した。
「…はい、これ。さくら専用。部屋のAIもコピーしといた。」
マリナさんが金属製の箱を差し出してきた。
「このシリーズは、チームのお揃いだよん♪」
レイナさんがそう言うと、姉妹は揃ってぬいぐるみ端末を顔の横に掲げた。
マリナさんが☆KimoKawa☆ぐりふぉくん型で、レイナさんが☆KimoKawa☆きまいらちゃん型だ。
また乳が邪魔でよく見えなかったけど、他のメンバーもぬいぐるみ出してポーズ決めてたっぽい。
箱を受け取ると、ピピッと音がして箱が開いた。
さっき登録した生体情報がもう活用されているってことですね!
箱の中には☆KimoKawa☆まみぃちゃん型のぬいぐるみ端末が。
これが私の専用端末かぁ♪
「えへへ」と、私もみんなの真似をして端末を顔の横に掲げる。
《姫様、これから、は、爺、と、いつでも、一緒、ですぞ!てへぺろりん♪》
モニターと端末、両方から同時に発せられた「てへぺろりん」に、その場にいた一同が微妙な空気に包まれた。