やっぱり神河さんは強い!

 こっちは武器と金髪パワードスーツを使ってるのに、生身の神河さんに勝てませんでした。

 

 ショートヘアでパワードスーツが使えるのには理由があります。
 ペラ男に拉致られた時に金髪がコートみたいになったのを思い出しまして…髪をショートにして、その分を「インナースーツ」に変えるイメージをしたんです。
 女神モードは露出度の高い鎧なんで、セクシーさを損なわないよう、インナースーツのデザインには細心の注意を払いました!
 最初は上手くいかなくて、変身後にロングからショートに変えてたけど、最近やっと、ショートヘア&インナースーツ着用済みで変身できるようになりました。
 普通のヴァンパイアは、髪型や装飾品を含む基本造形の変更も追加もできないらしいです。
 異常なリアライズ能力があるからできる芸当、だと霧島先輩は言ってました。
 まぁ、数値だけなら二階堂姉妹の何倍もありますからねぇ。


「強くなったな。」

 全く息切れしてない神河さんが、肩でゼェハァ息をしている私に言った。


「そうすか?ぜんぜん強くなった気がしないんすけど?」

「最後の技…。勝負は分からなかった。」

 最後の最後にとっておきの技を使おうとしたら、何かを感知したらしい爺に止められちゃいました。もちろん電撃で。
 使おうとしたのは、皮ルイズ戦で使ったフェザーバレットの劣化版。たぶん致死技に該当したんだと思います。
 今日リアライズできたの羽根は20枚くらいだったと思う。あの時のフェザーバレットは両翼で300超えたはずだから、まだまだっすね!


「私がもっと強かったら、爺に止められなかった。」

 グラフカンスト済みの神河さんはそう言って悔しそうに唇を噛んだ。
 スポーツドリンクっぽく飲んでるけど、手に持ったボトルに入ってるのが血液なのを私は知っている!
 ちょっとスポ根マンガっぽくて良い雰囲気なので、前から気になっていたことを聞いてみた。


「あの、なんで神河さんは、そこまで生身の強さにコダワルんですか?」





 聞いて失敗しました。ものすごく長い沈黙が…。


「… … ……く……いから…。」

「え?なんて?」

 やっと沈黙が終わったと思ったら、当の神河さんが物凄い勢いで部屋を出てってしまった。


「え!?あ、お、お疲れさまでしたぁ…。あ、あの!携帯忘れてますょ…?」

 相当慌ててたらしく、神河さん愛用の☆KimoKawa☆うるふくん型ぬいぐるみ端末を忘れてった。



 あ、戻ってきた!

 携帯探してるー。
 ここにあるー。
 こっち来るー。
 携帯とるー。
 敬礼するー。
 サヨナラー。

 てか、さっきより速いし!



「はぁ、なんて言ってたんだろ…?」

 私は寂しさを紛らわすように呟いた。
 ここ最近、みんなが帰った後の時間がすごく寂しくて泣きそうになる。


《姫様、RECオール、再生、します、かな?》

「爺!でかした!今すぐ再生すべし!」



 音を大きくした時の、サーという雑音に混じって、はっきりと聞こえました。


「…変身すると…可愛く…ないから…。」

 まさかの理由に、爺と平林さんが一番驚いてた!