二階堂姉妹が帰った後、さっそく端末を弄り倒しました。
ここからはヴァンパイア語を日本語に翻訳してお届けします。
「王国騎士団について知りたい。」
《姫様、王国騎士団、に、関連、する、閲覧可能、情報、は……教育プログラム、が、5千個、以上、見つかりました、ぞ。》
応答するAIの音声クオリティは人間界より低い感じ。
ちなみに私は、AIを「爺モード」ってやつに設定しました。
「一番簡単なやつ。」
《…よいこシリーズ『おうさまときし』、を、再生、します、のじゃ。》
「あ、ごめん。高校生以上対象に絞り込みして。」
《姫様、申し訳、ありません。爺、には、高校生、が、分かりません、ぞ。》
「えーと…じゃあ、15歳以上対象に絞り込みして、その中で一番文字数が少ないやつ。」
《…騎士団式復習ドリル『数学1』、を、再生、します、のじゃ。》
うわー。確かに文字数は少なめ!
てゆーか、めんどくせー。
「ストップ!リスト見せて。」
《姫様、少し、ワガママ、で、ございます、よ。》
このAIは優秀なんだか、無能なんだか…。爺はボケ始めてるって事で許してやろう。
仕方ないからリストからそれっぽいのを自力で探すさぁ!
「これ、224見せて。てか、そのまんまじゃん。」
《…初等兵科教科書『王国騎士団の歴史』、を、再生、します、のじゃ。そのまんま、ですじゃ。てへぺろりん。》
爺よ…。返しのクオリティだけ高いと地味にムカつくぞ。
しかもその「てへぺろりん」は私がさっき教えたやつだし。
《姫様、読み聞かせ、を、しましょうか、の?》
「うん。お願い。」
《第1章、王国騎士団の成り立ち。……云々……。》
いかにも教科書といった文章を読み上げる渋い声を聞いてると、条件反射的に眠くなるから不思議。
耳毛生やしてマジ寝しそうになりました。
「爺、もういいや。」
《姫様、教養、は、大事、ですぞ!》
このAI、性能を余計なとこに発揮しすぎじゃね!?
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~王国騎士団の歴史~
(私の個人的な抜粋なので王様メイン)
王国騎士団は、その名の通り王国を人間の侵略から守る組織として結成された。
理由は分からないが、いつからか王様は人間と平和的な共生を目指すようになり、トランシルバニア領内で共生体制が確立すると、賛同者を集めてトランシルバニア領内に引きこもりを始めた。
王様に賛同しなかった名門バートリ家は、元老院を組織してヴァンパイアのための共和制新国を作った。この時、平和により解散寸前だった騎士団は新国に組する事を選び、指揮権をバートリ家に託した。
その後、新国内で内乱が起きると、憂いた王様は、自分が新国の象徴的王(騎士団指揮権も政治的決定権もない王)になることで内乱を沈めた。その見返りとして王様は、トランシルバニアの自由と、騎士団によるトランシルバニア防衛を、約束させた。新国の基盤が固まると、王様は玉座を降り、トランシルバニアで自由な生活を謳歌している。
騎士団は、今も昔も変わらず、人間の侵略からヴァンパイアを守る、ヴァンパイア界の最重要組織なのだ。
王様ってドラキュラなのに平和主義者なんだ。
悪役に仕立て上げたストーカーさん(作家)の責任は重大だね!
あれ?大昔に人間と戦争して、ヴァンパイアが勝って、それからお互い干渉してないんじゃなかったけ?人間の侵略ってどういうこと?
そんなことを考えているうちに寝てしまった。