お風呂に上半身を沈めてから5分以上経っている気がする。
 不思議と息苦しくならない。Vマイクロムが私の代わりに呼吸してくれているからだ、と私は勝手に納得している。


 金色の水面を見ながら今日の事を思い返してみた。

 同じヴァンパイアでも、3組の戦い方と強さはそれぞれ異質なものだった。

 自らの力を増強する神河さん。ベルセルクの名に恥じない強さ。
 属性物質を利用する井伊さん。精霊と呼ぶに相応しい強さ。
 リアライズを駆使する二階堂姉妹。魔法のような変幻自在の強さ。


 3組のチャートグラフを見た限りでは、霧島先輩の言う通り、上の項目である「リアライズ」が他の項目よりもズバ抜けて高い二階堂姉妹が私に最も近いと言える。しかし、姉妹は常に血液を補給しながら戦っていた。つまり有限の強さなのだ。

 ここで1つの疑問が浮かんだ。


 なぜ私は血液の補給を必要としないのだろう?

 傷ついた神河さんと井伊さんは血液補給によって再生した。リアライズを続けた二階堂姉妹は血液を手放せなかった。
 私は…翼や腕をもぎ取られても血液補給なしで再生した。上半身に開いた穴も同様だ。

 なぜ?

 再生から数時間経った今でも血液を必要としていない。切り取られた時は暴走していたのだから、濃度が薄くなると血を欲する理からは外れていない。

 それなのになぜ…?


 分からない事を考えてたって仕方ない。今は分からなくてもそのうち分かる!
 私は自分にそう言い聞かせて、勢いよく湯船から飛び出した。長く豊かな金髪から滴り落ちる水滴は、水そのものが金色に輝いて見えた。