※この物語は、生まれながらに不安障害を持った男が、２０１８年頃から現在に至るまでに辿った『実話』である。

　なおプライバシーの関係上、全ての人物は偽名とする。

〈前回のお話〉

《第48話　　深キョン》

　タマゴサンドとカフェオレを席に置くと、女子は「ありがとー」と目を線にして笑った。

「はいはい、じゃあお金返してください」

　言いながら俺は女子の向かいに座った。

「美味しそー。いただきまーす」

　女子は無視してタマゴサンドに口をつけた。

「あの、お金を――」

　俺の言葉を遮るように、女子はタマゴサンドをモグモグしながら、左の手のひらを見せた。

　そしてタマゴサンドを両手に持ち、食べ進める。

「ん～！　やっぱコンビニとは違うね」

　どうやら食べ終わるまで俺の話を聞く気は無いらしい。

（はあ……。マジでなんだよコイツは……）

　ホントに居るんだな、見た目は良いのに中身がどうしようもない人って。

　また１つ賢くなったわ。

　笑うと目が線になるところとか愛嬌があって可愛いのに……。

　あとこの女子、相当お金に余裕があるらしい。

　というのも、ブランド物の小さなバッグを持っているからだ。

　それを日傘と一緒に傍らに置いている。

　日傘に目を取られて気づかなかったが、たぶんあの時も肩にかけていたのだろう。

（どっかで見たことあると思ったけど）

　女子は深田恭子に似ていた。

　しかし、それを認めたくない自分が居て、『深田恭子を限りな～く一般人の顔に近づけた人』という称号を俺は付けていた。

　こんなのに似てるなんて言ったりしたら、ご本人に失礼だしな。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【第49話に続く】

【第48話】 深キョン