母親と子どもは、この世で、顔をあわせた瞬間から、相手を求め、期待する。そのときから、お互いの求めるものは、わずかに、ずれる。言葉をもたない幼児は、泣く、わめくといった表現で、訴える。母親は、大人げもなく、感情的になる。瞬間的に。母親との亀裂は、そのときに始まっていると説く。

 子どもが死にたいと考えだす時期がくる。母親は現状を放棄し、家をでる。お互いに生きることの喜びを探そうとはしない。

 こうした衝動を起こすものは、どこからの連鎖か。この本は、怖い。

 立ち止まり、考え、振り返ることをみずからに課してみないと、たんに「読んでみた」「参考になる」で゛終わってしまう。わたしが気付かされたのは、親子でなくとも、向き合う相手と「関係を見つめ合う」といった儀式が欠けている暮らしのことである。向き合う相手はいろいろである。

さて子どもとの関係を見つめると、内面の詳細がわかる。なぜ、子どもに執着しすぎるのか。「母は、うっとうしい」と思われ、言われるのを、愛情の表現と受け取って笑っていては、哀れである。

 医師は事実を書く。情報を拾ったものではない。その強さに圧倒される。「安定した愛情に恵まれなかった人や傷にとらわれた人は、感情的になることで、問題をこじらせてしまう」自分には無縁だという思う大人にもおすすめ。

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