溢れ出る黒いもの。
それはどんどん溢れ、わたしを囲む漆黒の何かになる。
周りには、それ以外何もない。
どんどん溢れる。
わたしを覆い尽くす。
それは早かったかもしれない。
ゆっくりだったかもしれない。
何分、何時間経ったかわからない。
わたしはその黒いものたちに囲われて、
ただただ1人、
泣いている。
方角も、光も、音も、何もない暗闇で。
ただただ1人、泣いている。
ずーっと、ずーっと。
すると、何もなかった場所に、
突然勢いよく風が吹いた。
その風は、わたしを覆い尽くすこの黒い何かを、
それは、
床の板が一枚一枚剥がれていくみたいに。
それは、
沸騰したお湯の気泡が、浮き上がって空へどんどん飛んでいくみたいに。
それは、
巨大な魚のウロコが、次々と剥がれて、
まるで自分が、人魚にでもなったのかと錯覚するみたいに。
目を丸くしているわたしの横を、周りを、
1つ残らず、舞い上がらせた。
決してわたしには必要ないものだと、
どこかの遠い国から伝えに来てくれた魔法使いの、桜の精のように。
本当に勢いよく。
空へ。
高い高い空へ。
舞い上がらせた。
それは本当に、真っ黒い色をしていたのに、
キラキラしていた。
わたしの周りは、目の前は、
こんなにも。こんなにも。
そこに現れたのは、
真っ白い、
どこに何を置いても良いような、
どんな色を塗っても良いような、
どこへ行っても良いような、
何を作っても良いような、
ただただ白い、景色だった。
そこからわたしは一歩
足を進めた、