5音*平穏を破る侵入者
深紅達が海生弥と出会ってから三日・・・。
深夜に突然、深紅のチャトフォが鳴り響いた。
「んー何・・・?」
深紅は目をこすりながら、チャトフォのディスプレイを覗き込み―
血相を変えて跳ね起きた。
そのままタンスの引き出しから服を取り出して、素早く着替えを済ませる。
急いでいるのか、少々乱暴にチャトフォを上着のポケットにねじ込み、深紅は家を飛び出した。
目的地は、下京和地区の歓楽街。
5分後の、下京和地区の歓楽街。
深紅が辿り着くと、そこは地獄絵図の様相を呈していた。
建物の壁や、コンクリートの地面に広がる、赤。
辺りには、吐き気を催すほどの嫌な臭いが立ち込めている。
そこに転がっているのは、人間の、頭部。
頭部だけではない。胸部、足、腕、指、さらには臓物までが散乱している。
生存者は恐らく、ゼロ。
「遅かったか・・・」
深紅が唇を噛んだ、その時。
何かが、深紅の上から襲い掛かってきた。
「!?」
とっさにその場を飛びのき、襲撃者との距離を開く。
砂埃が薄れ、少しずつ襲撃者の容貌が見えてきた。
見た目は、まるで犬のようにも見えなくはない。
しかし、犬とは明らかに異なる点がいくつもあった。
まず、その生物の身体の3分の2程は頭部で構成されている。
さらにその頭部は、鋭い牙の並ぶ、大きく裂けた口が9割以上を占めている。
前肢は華奢ではあるものの、3つの巨大な鉤爪がついている。
対照的に、後肢は筋肉が発達している代わりに鉤爪はない。
大きさも、大人の雄牛ほどはあるだろうか。
一目で、この世の生物ではないとわかる。
ただ、深紅はその生物の正体を知っていた。
本来ならば、時空旅行者を追跡し、狩る存在。
「『ティンダロスの猟犬』か・・・!」
唸り声を上げて、猟犬が地を蹴った。
ティンダロスの猟犬には、ある能力がある。
‘鋭角からの出現’が可能なのだ。
つまり裏を返せば、鋭角のないところには出現できない。
そのことを熟知していた深紅は、自らの能力を発動させた。
深紅の両目が紅く光り、瞳孔が細くなる。
それと同時に深紅の身体を光が包み、次の瞬間丸い防護壁となる。
猟犬は勢いのまま防護壁にぶち当たり、跳ね返された。
吹っ飛んで建物に打ちつけられ、よろめく猟犬。
それを目掛けて深紅が、炎弾を放った。
猟犬は一瞬にして炎に包まれ―
断末魔の叫びとともに消滅した。
深紅の能力、「竜瞳」。
あらゆる元素を意のままに操ることの出来る、いわば魔法のような能力だ。
ただしその名が示すとおり、元来はドラゴンにのみ備わっている能力だ。
そのため、人間である深紅が使用する場合、身体にかなりの負担がかかる。
その負担は想像を絶するもので、深紅でなければ死に至るほどの負担だ。
疲れ果てた深紅は地面に座り込み、緩慢な動作でチャトフォを取り出し、番号を押した。
電子音が鳴り。
「・・・・・・あ、清牙?ごめん、ちょっと迎えに来てくれない・・・?」
深夜に突然、深紅のチャトフォが鳴り響いた。
「んー何・・・?」
深紅は目をこすりながら、チャトフォのディスプレイを覗き込み―
血相を変えて跳ね起きた。
そのままタンスの引き出しから服を取り出して、素早く着替えを済ませる。
急いでいるのか、少々乱暴にチャトフォを上着のポケットにねじ込み、深紅は家を飛び出した。
目的地は、下京和地区の歓楽街。
5分後の、下京和地区の歓楽街。
深紅が辿り着くと、そこは地獄絵図の様相を呈していた。
建物の壁や、コンクリートの地面に広がる、赤。
辺りには、吐き気を催すほどの嫌な臭いが立ち込めている。
そこに転がっているのは、人間の、頭部。
頭部だけではない。胸部、足、腕、指、さらには臓物までが散乱している。
生存者は恐らく、ゼロ。
「遅かったか・・・」
深紅が唇を噛んだ、その時。
何かが、深紅の上から襲い掛かってきた。
「!?」
とっさにその場を飛びのき、襲撃者との距離を開く。
砂埃が薄れ、少しずつ襲撃者の容貌が見えてきた。
見た目は、まるで犬のようにも見えなくはない。
しかし、犬とは明らかに異なる点がいくつもあった。
まず、その生物の身体の3分の2程は頭部で構成されている。
さらにその頭部は、鋭い牙の並ぶ、大きく裂けた口が9割以上を占めている。
前肢は華奢ではあるものの、3つの巨大な鉤爪がついている。
対照的に、後肢は筋肉が発達している代わりに鉤爪はない。
大きさも、大人の雄牛ほどはあるだろうか。
一目で、この世の生物ではないとわかる。
ただ、深紅はその生物の正体を知っていた。
本来ならば、時空旅行者を追跡し、狩る存在。
「『ティンダロスの猟犬』か・・・!」
唸り声を上げて、猟犬が地を蹴った。
ティンダロスの猟犬には、ある能力がある。
‘鋭角からの出現’が可能なのだ。
つまり裏を返せば、鋭角のないところには出現できない。
そのことを熟知していた深紅は、自らの能力を発動させた。
深紅の両目が紅く光り、瞳孔が細くなる。
それと同時に深紅の身体を光が包み、次の瞬間丸い防護壁となる。
猟犬は勢いのまま防護壁にぶち当たり、跳ね返された。
吹っ飛んで建物に打ちつけられ、よろめく猟犬。
それを目掛けて深紅が、炎弾を放った。
猟犬は一瞬にして炎に包まれ―
断末魔の叫びとともに消滅した。
深紅の能力、「竜瞳」。
あらゆる元素を意のままに操ることの出来る、いわば魔法のような能力だ。
ただしその名が示すとおり、元来はドラゴンにのみ備わっている能力だ。
そのため、人間である深紅が使用する場合、身体にかなりの負担がかかる。
その負担は想像を絶するもので、深紅でなければ死に至るほどの負担だ。
疲れ果てた深紅は地面に座り込み、緩慢な動作でチャトフォを取り出し、番号を押した。
電子音が鳴り。
「・・・・・・あ、清牙?ごめん、ちょっと迎えに来てくれない・・・?」