モテたい一心からギターを始めたわたしは、トントン拍子でコピーバンド「SOUTH PARK」を結成し、盛岡市最大の楽器店『東山堂』でのスタジオライブを目指していた。ギターがあまり弾けなかったので消去法から担当はギターボーカルとなった。曲目を今でも覚えている。
・Sum41「The Hell Song」山さんとの思い出の曲
・Sum41「Over My Head」声が出ねーよ
・Sum41「Still Waiting」声出ないって
・OffSpring「Want You Bad」好きな曲 でも声出ない
・OffSpring「Come Out Swinging」マジで声でない
・GLAY「Misery」何故原曲バージョンじゃないのか
ご覧のようにキーが高くて声が出ない曲ばっかりだったが、スタジオで大きな音を出すのはとても楽しかった。
バンド初結成の高校生にとって、バンドの出来など関係なくスタジオ練は楽しいものなのだ。
スタジオは市内に2箇所あって、東山堂楽器もしくは青木楽器併設のスタジオで練習した。
まだ雪が残る岩手の街を、暖房が効いたバスで移動していたことを覚えている。
僕らは青木楽器の方が好みで、なぜかといえば①狭くて古かった②東山堂より安かった③店員が無愛想だったという理由からである。
東山堂楽器はそれに対しキレイめで、青木楽器の方がロックっぽくてカッコいいと思っていた。
多分その感覚は今でもそんなに変わってはいない。
青木楽器は残念ながら2019年に閉店した。
そんなこんなでスタジオ練を重ねて、SOUTH PARKは東山堂楽器のスタジオライブに出演した。
確かお金を払えば出演可能で、土日の昼から開催の10代中心イベントだったと思う。
ライブ当日はとにかく必死だったぐらいしか記憶にない。
ただ、いつもイジられている自分がステージに立っていることに興奮はしていたと思う。
東山堂ライブには高校時代数回お世話になり、そこで知り合いが何人かできて中には山さんちに遊びにきたりするヤツもいた。
その中でも覚えているのがコウジで、同世代の中ではギターヒーローの一人だった。
当時、周りの上手いギタリスト達は早弾き志向のヤツが多くて、「地獄のメカニカルトレーニング」を持っているのが普通だったし、Mr.BigとかXのソロを得意気に弾くヤツに「すごいねー」とか言いながら内心ケッっと思っていたものだ。下手だから卑屈だったんだよね。別に何にもできないくせに、ロックは技術じゃなくて表現だから技術は必要ないって思っていた。
コウジは優しくてイイヤツで、「弁当に納豆が入っていた」ことをいつもイジられていた。家が割と近かったこともあり、お互いの家や山さんちで放課後度々遊ぶようになった。
コウジは高校生ギターヒーローの中でも一線を画していて、彼の家に遊びに行った時、Mr.Bigの「Colorado Bulldog」を弾いたかと思えば、トーンを絞ってスローなブルースのアドリブを虎目のギブソンレスポールで奏でてくれた。今思えばスラッシュが好きだったからかな...彼がやっていたのはメロコアバンドだったが、渋いギターも弾けるヤツだった。
コウジのバンドはライブハウスにも出演していて、何回か見に行った。
盛岡のライブハウスといえば「Club Change」で、有名バンドもそこに出演していた。
チェンジでも土日の昼に確か「Teenage Shock」だったかそういう名前の10代イベントを開催していた。
当然、見に行けば自分たちも出演してみたくなる。コウジも「千鳥たちも出れるよ、出てみれば?」と背中を押してくれ、SOUTH PARKはチェンジ出演を目指すことになった。