子供の頃は、焼肉といえば「ご飯!」だった。


とにかく肉をオン・ザ・ライスして、タレが染みた白米をかきこむ。それが焼肉の王道であり、黄金律だった。


しかし、大人になると、「とりあえずビール!」と威勢よく注文して「焼肉にはやっぱりビールだよね」なんて言いながら肉をつまむ。


気がつけば、焼肉=ビールという図式ができあがっていた。肉を焼く。食べる。飲む。また焼く。


いつの間にか「つまみ」として肉を食べるようになっていたのだ。

ところが、最近ふと思った。
「あれ? ご飯は?」

ビールで流し込む焼肉もいい。だが、それでは何かが足りない気がする。あの頃の、肉と米が織りなす奇跡のハーモニーはどこへ消えてしまったのか?



そこでボクは、ある日「原点回帰」を決意した。

ビールだけで終わらせず、ご飯を注文するのだ。


と同時に「今日一番美味しかった肉」を選び、それをもう一人前注文する。

ボクはじっくり考える。

ハラミか? いや、ロースもよかった。だが、一番心に残ったのは……

──上カルビ!

注文したそれを慎重に網の上に置き、絶妙なタイミングでひっくり返し、タレにくぐらせる。そして、白米の上にそっと置いた。

肉オン・ザ・ライス。


美しい。


まるで焼肉のゴールデンコンビが、今ここに完成したかのようだ。ボクは、静かに箸を伸ばし、その黄金の一口を食べた。

……うまい。

タレの甘辛さ、脂のコク、米の甘み。それらが見事に調和し、ボクの口の中でひとつになる。


この瞬間、「今日の焼肉、最高だったな」と心の底から思える。

結局のところ、ボクにとっての焼肉の締めは、こうでなくてはならないのだ。

「最初はビール、でも最後はご飯。それも その日一番の肉で。」

これこそが、ボクがたどり着いた「焼肉の最適解」なのである。