しばらく前の礼拝の後、牧師が近づいてきて、こう言われました。



宇宙人この前の礼拝でも少しアナウンスしたけど、うちの教会で近いうちにお葬式がありそうなんです。オルガン演奏を希望された場合、予定は空いてますか?



牧師はまずもう1人のオルガニストJに打診してみると言ってました。私はホリデーに行く予定も無かったので、Jが無理なら引き受けます、と答えました。



私が弾いている教会でのお葬式は、教会音楽にこだわらず、ご遺族からの希望を優先してCDが使われたりします。教会のオルガンを弾いて欲しいという希望は、あえてオルガンの生演奏をお願いしたいというご遺族の気持ちを感じるので気が引き締まるとともに、私はかなり緊張します。



年に多くて数回あるかどうかという状況なので、慣れるほど常に回数をこなせるという類いものでもないですし、もちろん頻繁にあって欲しいとは誰も思わないですよね。



やはりお葬式という、その方にとっては人生最後のセレモニーですから、その状況の重大さからくるプレッシャーで「ハイハイやりますよ〜」と気軽に受けられないものです。



今まで何回か奏楽させて頂きましたが、毎回、不思議と縁というものを感じます。



お話があったときは、どうしても無理な場合を除き引き受けてきました。



宇宙人「今回は大きなお葬式になりそうです。」と牧師が言っていました。



私は心の中で「Jが引き受けてくれないかな」と思っていました。



Jは本職は別にあるようですが、教会オルガニストとして何箇所かの教会で何年も弾いています。



子供の頃はオルガンを習っていたらしく、足鍵盤の使い方も慣れていますし、知っている曲も私に比べれば膨大な数です。



でもJは、なんというか、ちょっとなめてるんですよね。



多分オルガン演奏もいいお小遣い稼ぎと思っていると思います。



忙しいときは全く練習してこずに、知らない賛美歌だと、右手だけでメロディーを弾いてやり過ごして終わり、みたいなこともあります。



思えば、Jに初めて会って自己紹介した時もあんまり良い印象なかったな〜ちょっと不満

私が「ピアノをずっと弾いてきたけど、オルガンも頑張ってみたいんです。足鍵盤もそのうちできるようになりますかね?」と聞いたら、



「無理だね」



と半笑いでピシャリと言われたのを私はずっと根に持っています。



食べものと音楽の恨みは深いのです。



えーーーとJに対する恨み節に脱線してしまいましたがキメてる、今日はこの辺でやめときましょう。

Jはキャラが濃いので、今後も別の話で出てくるかもしれません。指差し




とにかく久しぶりのお葬式の奏楽依頼は、正直なんとなく気が引けました。



式の大きさで何かが変わるというものでもないのですが、結婚式と違って準備期間もほとんど無く、当たり前だけどリハーサルは無いです。弾く曲も千差万別です。当日何人来るかもわかりません。またどこの葬儀屋が執り行うかで、式がスムーズに進行するかが随分違います。




牧師はまずJに聞くと言っていました。

ご遺族はもしかするとよくわからないアジア人女性が弾くより、伝統的なオルガニストらしい西洋人男性の方を希望してるのかも、とも思いました。



オルガニストの指名が、ある場合もあるんですよね。



数日後、牧師から私に正式な依頼メールがありました。



ここまで来たら腹を括るしかありません。

Jは本職で忙しいのか?ご遺族は私でいいのか?とか余計な雑念は意識的に排除します。もうそういう流れなら自分のベストを尽くすしかありません。




故人とはいえ、何かのご縁です。気を引き締めて引き受けることにしました。



つづくオカメインコ