盛り土やヒ素などで話題を呼んだこの再開発ですが、行ってこそ分かる“発見”、聞いてこそ分かる“想い”がありました。
①築地は「観光地」ではない
日本の台所と呼ばれる築地ですが、そもそもここって誰がターゲットなんでしょう?
当然「卸屋」です。
築地が最も忙しくなるのは早朝、この場所でトラックや軽自動車が入り込み、梱包された海鮮類が積み込まれます。故にこの場所が「築地の中心」と呼ばれているわけです。
観光客向けにターレに乗せてもらって移動できたり、観光案内所では周辺地の情報がありお爺ちゃんが英語で挨拶してくれ、予約をすればセリなんかも見れます。ただ、それらは全部お金が落ちない。ゆえに関係者にとって観光客は「写真を撮って通路を塞ぐ挙句何も買わない邪魔者」なんです。
そんな中動画の運転手さんみたいに、観光客を喜ばせようと「無償で」ターレに乗せてくれる方々もいらっしゃいます。お金を取るのは違うと。そのおもてなし、本当に敬服します。
では問題は何か?
それは「お金を落とすシステムがないこと」
観光地とはその地域の魅力を以ってして、観光客にお金を落としてもらい、その上に初めて成り立つ場所です。
地元の人や関係者の我慢や血の努力で成り立つべきものではないです。
具体的には……
1. 一般入場10時なのに多くの店が店じまいする
2. 食事処が築地市場から独立している
3. 築地で他のことができない
八食センター、札幌朝市、函館朝市のように自分で選んだ食品で丼を作ったり、漁師町みたいに釣った魚を持って行って調理してくれるお店がないと、市場で魚を買う観光客なんていませんね。
そして市場の見物会が終わった後にすることもなく、その場を去ると…… そりゃ市場の方も観光客も困ります。お金払うものがないんだから。
これが豊洲に移る際のポイントです。
②移転に伴う「変化」
Cons
✔︎市場関係者の半強制退場
築地は都の保有地らしく、豊洲に移る際新しく賃貸借契約を結ばないといけないそうな。引っ越しも普通の立退きと同じで引っ越し代金は自己負担、とりわけ厳しそうなのが豊洲は厳格にブース分けがあるようで、これまでみたいなゴミの処理方法が通じない他、お水や氷の管理も変わってくるそうです。「やり方が変わる」ってのは意思を持っての変更とは違って、より角が立って感じるはず。
どこかが後継者不足と報道していたけれど、むしろ行ってみると若い人ばかり。築地は一度人生に失敗した曰く付きの人々も受け入れてくれるそうなんですって。だからか、「築地の人々がマッドマックスのキャラクターみたいに見える」なんて記事も書かれていました。
築地は高齢化なんて言葉は似合わなく、若い人たちとおじさま・おばさま方が挨拶しあって、和気藹々と仕事を進める温かい場所に見えました。
✔︎アクセスの悪さ
行ったことがある人は感じると思うんですけど、一日観光するつもりで築地行ってください。すると朝昼食を築地で済ませた後、銀座でショッピング・新橋で飲み屋巡りなど歩いて回れる範囲が広いんですね。この「歩かせる」のがすごい大事で、地方や海外からの客の場合、24時間のスケジュールではなくざっくりと「○○にいく」と決めることが多いので、目に入った場所に寄り道してくれたり、休憩所として喫茶店やカフェの利用率も上がります。
一方、有楽町線もゆりかもめもある豊洲ですが、ここ歩いて回るのがすごく不便。豊洲だけを楽しむのなら問題ないけれど、橋を渡らなきゃいけないことが多く、自転車や歩きでの移動に不向き。
これが豊洲の弱みだと私は思います。
Pros
✔︎豊洲での複合施設開発による一体化
三井不動産主導のこの開発では豊洲エリアに・パークシティ豊洲 →住宅エリア
・海上公園・豊洲公園→環境エリア
・ららぽーと豊洲 →商業エリア
・海上バス・ステージ→イベントエリア
と全部ができる構想が練られています。
ここの何がいいかと言うと
〈海上バス〉
水の街として海上バスを運営し、ゆくゆくは日本橋あたりまで昔の「海運エリアとして栄えた江戸を取り戻す」試みがなされていること。これが実現されれば、豊洲はそのバスの中核として活きるだけでなく、ここ周辺の「ストーリー」ができあがる。
〈ステージ〉
音楽や祭典、地域のイベントとして使える場所を整備することで、地域ブランドのマンネリ化を防げる。野外ライブや季節のイベントは、豊洲は魚を食うだけのところという飽きを解消してくれます。
築地ではできなかった、一日楽しむキャパを十分に備えた開発。ここはかなり進化した点だと思います。独立した分、新橋・銀座エリアでできたことのケアは必要ですが、新しい価値を生み出して豊洲市場+αが確立すれば、再び人は集まることでしょう。
✔︎築地跡地の再開発
※大阪 夢洲複合カジノ計画2025
築地後に何ができるのか?サッカー場や野球場、総合運動場などの案が出ていますが、安倍さんの思惑は新三本の矢や、観光立国推進政策の中身からも無論このIR一択と言えましょう。築地とこの話は切り離せません。
ではなぜこのIRが日本に必要なのか?
それを知るには外を見る必要があります。
1. 中国 5900万人
2. タイ 3200
3. 香港 2600
4. 日本 2400
5. 韓国 1700
アジアの観光収入でみると
1. タイ 49800 (100万ドル) 137件
2. 中国 44430 165件
3. 香港 32860 40件
4. 日本 30670 (≒3.3兆円) 47件 東京27件
5. マカオ 29880 12件
このように観光客数と観光収入を比べると、人数が少なくても収入が高い国の特徴として「五つ星ホテルの数」「カジノ」の存在が際立って見えます。 David Atckinson 著「新・観光立国論」にもあるように、
一人にいくら落とさせるかが観光収入を左右します。David曰く「日本は世界の富裕層が遊びに来ようにもホテルが安すぎてリストから外れる」と。その勿体無さを埋めるためのIRなんです。
かれこれ日本は戦後の急激な人口増加から
ゴールデンウィーク経済…ゴールデンウィークに押し寄せるたくさんの人々をさばくためのシステムや効率化がなされ、個人にフォーカスしたサービスよりも安さと早さを重視したサービス形態
ex) 〜限定サービスセット
大衆社会…大衆の動向が社会を決定する社会。政治的無関心、行動の画一化、孤独感の表れが特徴として見れる。
が誕生。大衆社会 日本ver.の一番の問題点は
庶民であることが正しく、贅沢を慎み、謙虚であることが求められ、それを逸するものは妬まれ、コミュニティから除外されることが文化になってしまうこと。
このことから日本では富裕層向けのサービス開発が先進国に比べて遅れを取り、海外視野の狭さと相まって今日まで嫌煙されてきた-----------
IR開発はそうした問題をまとめて取り除く解決策になり得ます。IR内では値段の高さや敷居の高さがバリケードとなり、日本の庶民を排し、富裕層をターゲットにしたサービスに特化することができます。聞こえは悪いですが、経済的には10万落とす人が1,000人くるより、10億落とす人が1人来てくれた方が儲かります。
そしてここが国民の理解しなければいけないところであり、一見IRは自分たちが行けない富裕層と庶民を分け隔つような場所に見えますが、観光収入として彼らの落とした金は国の財源になります。インバウンドの税収が上がると、国民の負担なしに国の政策は手厚く、増やすこともできます。
今の日本のように金のない人たちが何もせずに上にいる人を妬み、金を回せという国はいずれ崩落します。それを防ぐためにも、IRという対価を支払い、税収を以ってして国益を為す……
それがこのIR開発、ひいては築地を活かすことの真髄になるのではないでしょうか。
おまけ
③無くなるまえに築地飯
〈市場の厨房〉
ランチメニューは900円〜
丼も1,000円弱で楽しめる
ボリューム満点の食事処。
場所が分かりづらく、観光客は少ない反面、サラリーマンやOL御用達のお店として、12時以降はかなり混む。
炙りブリ・ネギトロ・甘エビ丼 1,100円
大盛りのネギトロはパンチ抜群。
醤油は薄味で、本来の味を損なわないようにする配慮が伺われる。
〈愛養〉
コーヒーとパンのお店。
メニューはドリンク、パン、ゆでたまごのセットで750円
その他ドリンクのみと築地で働く人の休み所として人気なお店。
モーニングや一息つきたいときにオススメ。
個人的にこのカップのコーヒーはかなり保温性が高いと思う。温かい店内に提供10分後も湯気が立っていた。
〈寿司大〉
台湾、中国、韓国人に大人気のお店。
店長おまかせセット4,000円では
旬なお魚9貫と巻物1つをいただける。
頃合いを見て板前が一貫一貫出してくれ、最後には好きな握りをオーダーすることができる。
5:00開店だが、4:00過ぎには2列目の行列が立ち並ぶほどであり、6時過ぎともなると1時間待ちは必須。8:00以降は3.4時間待ちを覚悟しなければならない。
このお店以外には丼店が多く、築地の寿司が食べたいという方は一度気合を入れて並ぶのもいいかもしれない。
この列の様子から
“Do Japanese eat Sushi even in morning?” と聞かれるほどみんな驚きの様子だが、答えはノーだ。
寿司大はお店前に15-20人ほど並んだのち、脇の列に人が並ぶ。中は一度に10人ほどしか座れない。
この他にも一貫ずつオーダー可能。

11時過ぎの様子。待機列終了の札が出た後は、並ぶことはできない。