皆さま　おはようございます。野田智子です。

お久しぶりですね。お元気でいらっしゃいましたか？

奄美地方は今日から梅雨になりますね。

先日、マンションの1階で老婦人と女性が何やら話し込んでいました。何かお困りですかと問いかけると、女性は老婦人が何を言っているのかわからないのよ。というのです。老婦人にゆっくりと聞いてみると、自分の部屋がわからないというのです。すぐに管理室に案内しました。管理人は名前がわかれば部屋番号はわかるんですがと言います。老婦人に名前を聞いても首を傾げます。老婦人はバッグを持っていました。バッグを見ていいですかと聞き、バッグの中には幸いにも身分証明書があり、名前がわかりました。老婦人と管理人と私の3人で老婦人の部屋に行きました。

ドアには鍵がかかっていませんでした。老婦人はどうしても出かけなければならないと言います。どこにいくの？今日は雨だし止めた方がいいと言い終わらないうちに老婦人は歩き出しました。ドアは開いたままです。

私と管理人は老婦人の後に続きました。老婦人はマンションを出て行きました。管理人はマンションから外に出ることができないと言います。私はひとりで老婦人の後を追いました。老婦人は健脚でスタスタ歩きます。途中道に迷ったのかキョロキョロしているので、そろそろ帰りませんか？と声をかけると、老婦人はスーパーマーケットに行きたいんですと言います。しばらく歩いているとスーパーマーケットがありました。老婦人は慣れた様子で買い物をしています。私はこの老婦人が普通なのか、普通ではないのかわかりませんでした。

買い物を終えた老婦人はスタスタとマンションに帰り、部屋に入るところまで見届けました。どうしても不安が拭いきれず、老婦人の部屋をノックしました。

老婦人はすがるような目で、鍵が見つからないの。探してくれる？と言います。部屋はとても整理されていましたが、20枚ほどのダウンコートが山のように積まれていました。

老婦人に名前をきても首を傾げます。身分証明の名前を言ってもピンとこないようです。

これが老婦人の普通の状態なのか。私はだんだん不安になりました。困った時の区役所と思いましたが、夕方で区役所は閉まっていました。次の日は土曜日、日曜日、月曜日は祝日でした。警察に電話しても事件ではないし、救急車は悪いところがないので来てくれないでしょう。

誰に相談したらいいかわかりませんでした。マンションの管理人に助けを求めても、関わらない方がいいと言われました。マンションでは連絡が取れなくても、ドアの前に新聞が溜まっていてもドアを開けることはしないそうです。部屋の中で死んでいても何年も発見されないことが考えられます。部屋の換気は良いので臭いはしないのです。

老婦人はトイレにも行けますし、ごはんも食べます。お話もします。なぜか笑顔はありません。それから4日間の間、朝、昼、夜と私の自宅で食事を作り老婦人に届けました。いつも完食でした。梅干しが好物です。でもとても不安でした。お願い死なないでね。という気持ちでした。

翌日、老婦人はおねしょをしていました。次の日もおねしょをしていました。次の日もです。やっぱりこれは普通ではないと思いました。本当に心配でした。

徐々に名前も言えるようになり、一人暮らしであることや少しの状況がわかりました。

親族に電話するも連絡は取れませんでした。

やっと火曜日になり、区役所に電話をして経緯を説明しました。

高齢者総合センターの社会福祉士に連絡を取って相談することを教えてくれました。

その日のうちに、社会福祉士は老婦人の部屋に来てくれました。

翌日はホームドクターは診療に来てくれました。

その翌日にはヘルパーが来てくれてました。

その翌日は病院で診察を受けると、脳に異常があることがわかり、その日のうちに入院となりました。老婦人は手術はすることはなく1ヶ月入院した後、リハビリ病院に転院しました。

現在、リハビリ病院に入院中です。

老婦人は80代の一人暮らしです。ようやく80代の弟に連絡が取れました。

社会福祉士に、これから老婦人はどうなるんですか？と伺うと「そうですね。本人が施設に行きたいと言えば施設、自宅に戻りたいといえば自宅ということになります」

もしあの時、声をかけなかったら後を追わなかったら、バッグの中に身分証明書がなかったら、老婦人はどうなっていたんだろう。

老婦人は定年まで経理の仕事をして、誰に頼ることもなく、一人で生きてきたといいます。

ひとりは楽だし、ひとりが好きだけど、初めてあなたに親切にしてもらって感激しているんです。と老婦人は泣いた。私は悲しかった。こんなことで感激している老婦人がかわいそうだった。

一人暮らしの65歳以上の高齢者は年々増えていくと思います。

最後の日まで幸せでいられる社会になってほしいと願います。

嘘のような本当の話