世界はもっと親しみに満ちて

『パレスチナに生きるふたり　ママとマハ』

文・写真　高橋美香

かもがわ出版2023.1　1,800円＋

私が不思議でならないのは、ヒトラー政権下で大虐殺に遭ったユダヤ人の国家イスラエルが、パレスチナに対しては土地を奪い、空爆を繰り返し、命を奪っていることだ。多くの国々はそれを見て見ぬふりをして、いや、支持さえしている。いまある紛争や戦争はそうした行為の積み重ねられた上にあるのだ。

私はパレスチナのことを、そこに暮らす人々のことを知らない。名前のある一人を知らない。だから、この写真絵本にとてもはげまされる思いがあった。作者は写真家で、前に『パレスチナのちいさないとなみ――働いている、生きている　』（かもがわ出版）を出していて、それはとてもいきいきとパレスチナの人びとの日々を写しだしたレポートだった。

今回は、マハとママという二人の女性の生き方、家族と日々の暮らしを綴っている。毎日の当たり前に繰り返される日々。しかし、いつもイスラエルからの攻撃（空爆やミサイル、土地収奪や強制的排除等々）におびえ、実際に脅かされている。二人とも家族や親戚を奪われ、殺されている。しかし、生きていく日常は繰り返していかなければならない。

小さな子どもがとてもかわいい。瞳がきれい。写真家の力は大きいと感動する。作者はこの二人の家で「居候」として暮らしながら写真を撮っているので、レポートもとても暖かで共感のわくものだ。ぜひ読んでほしい本だ。

もっと、もっと知ろう、パレスチナ……