2月22日(木)雨 「へ」=イカス!!『ベンのトランペット』

 

 とても寒い日となった。朝はちょっと雪が混じった。2月は東京の天候は厳しく変化する。春が来る前にドカ雪が降ったりする。

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 若いころ、「イカス」「イカシテル」という言葉が流行った。今は聞かれなくなって、「カッコいい!」と言うようにまったが、少しニュアンスが違う。じゃあ、どう違うんだ? と聞かれたら、この絵本を読んでくれと示したい。

 貧しい黒人少年のベンはいつも近くのジャズクラブから聴こえてくる音に合わせてトランペットを吹く。と言っても、彼は「エアー・トランぺッター」だ。近所の悪ガキたちがそれを笑う。しょぼくれるベン。そこに、休憩で出てきたトランペーターが声をかける。

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「ラッパはどこにあるんだい?」

「もってないよ」ベンはいった。

トランぺッターはベンのかたにうでをまわしていった。

「クラブへこいよ。」

「いっしょにやろうじゃねえか。」

――

 これが「イカシタ」トランぺッターだ。自身も貧しく厳しい過程を経て「いま・ここに」いるのだるから。少年への深い理解と共感がイラストに表されている。「イカス」は、表面の良さだけではなく、その生き方を含めているように思う。

 絵がすごくいい! 黒だけで描かれた、シンプルで、迫力あるイラスト。谷川俊太郎さんの訳がいい。思いっきりベンとトランぺッターに共鳴している。

レイチェル・イザドラ作・絵、谷川俊太郎訳『ベンのトランペット』(あかね書房1981.11初版、2009.11第9刷)1400円