ハジメ君は幼稚園の年中さん。
今日はおじいちゃんの家に遊びに来ています。
おじいちゃんの家には畑があっていろんな野菜を作っています。
おじいちゃんは、その時とれる旬の野菜を、いつもお土産で渡してくれます。
「ハジメ 今日はゴボウを持って帰りなさい」
ハジメ君はゴボウをおじいちゃんから貰いました。
そのゴボウは取れたてで土が付いていましたが、仙人が使う杖のようにみえるゴボウでした。
ハジメ君は家に帰るまでの道のりで、ゴボウを仙人杖と名付け、杖代わりにして遊ぶことにしました。
「いっしょに遊ぼうね」とゴボウに問いかけると「良いよ一緒に遊ぼう」とゴボウが答えてきました。
「その辺のモノを僕で指(さ)してよ、いろんなものに変わるから」
「うん、分かった」
ハジメ君は自分が仙人になった気分で、仙人杖を使い水たまりを指すと、
泥だらけの水たまりが、なんとコーヒー牛乳に変わりました。
「うわー面白い」
愉快な気持ちになったハジメ君は目につくものを片っ端から指していきました。
木の葉っぱを指すとバナナに変わりました。地面に落ちていく葉っぱもバナナに変わって落ちていきました。
クルマを指すと馬車に変わりました。クルマのクラクションも馬の鳴き声に変わりました。
アスファルトの歩道を指すと宝石が敷き詰められた道に変わりました。陽の光にあたった道が宝石のように輝いてみえます。
こうしてハジメ君はいろいろなものを差して、変えていきました。
でも家に近づくとの外に出ていた母に大きな声で怒られました
「ハジメ、何してるの!」
「ゴボウさんと遊んでるんだよ」
なぜ怒ってるのか理解できないハジメ君はお母さんの怒ってる顔が笑顔になるかもと杖を母に向けて、
「笑顔になーれ」と言いましたが、お母さんは笑顔になりません。
「食べ物で遊んではいけません。それにゴボウさんを振り回したりしたらかわいそうでしょ。」
ふとみると仙人杖はいつの間にか元のゴボウに戻っていました。
「ハジメ、楽しかったよ。元気でな。」
ゴボウさんとの会話もそれっきりで、話しかけても返事はもう帰って来ませんでした。
その日の夕食。
ハジメ君は母の作ったゴボウのきんぴらを食べるのに、どうしても気が進みませんでした。
もうゴボウさんに会えないと思ったら悲しくて箸が進まなかったのです。
次の週、おじいちゃん家に行くと、またゴボウをくれました。
「今はゴボウが旬の季節だからね 今日も持って帰りなさい」
ゴボウを手に持つと、ゴボウさんが話しかけてきました。
「また会ったね おじいちゃん家に来たら いつでも遊べるよ」
ハジメ君はもう悲しくありませんでした。
ゴボウが取れる時期なら、いつでも会えることが分かったのですから。
ハジメ君はそれからというもの、ゴボウが取れる時期が来るのを毎年楽しみにするようになりました。
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