《宮》

スクリーンに映し出されたのは、ソウル市内の高級マンション。
王族たちにはどこのマンションなのかもわからない。
しかし、ただ一人険しい表情をするものが……。

《なぜだ?なぜあのマンションが……。
いや、あのマンションは私の名義ではないのだから大丈夫だ。》

などと考えているうちに続けて映し出された映像は屋上からバルコニーに降り立つ男の姿を捉えていた。
室内は俄にざわついたが、陛下は静かにスクリーンを見ている。

と、ある王族が
『陛下、不法侵入が映っております。早く警察にご連絡をいたしませんと……』


しかし、陛下は悠然と
『そう、慌てるな。もう全て手配してある。』

『しかし、あっ、中に侵入いたしましたが。』

その言葉に長老もスクリーンを確認して、テーブルの下で携帯を操作しようとしたとき、肩を叩かれ、両腕を拘束され携帯を取り上げられた。

携帯のスクリーンには、ソン翊衛士長の名前があった。

『長老、お静かに願います。もう少しこの場を楽しみ下さい。』
キム内官が小さな声で言う。


スクリーンの映像はマンションのままだが、今度は声が聞こえる。
どこかで聞き覚えのある声。

その場にいた王族会の面々は顔を見合わした。
この声は、皇太子……殿下。


『チェ……ギョン(シン君)』

その名前を聞いた身に覚えのある王族達は徐々に顔色をなくしてゆく。

しかし、続けて聞こえた声が


『叔母上さま』

叔母上……皇太子が叔母と呼ぶ人は……ソ・ファヨン。
これには、長老も驚きを隠せない
《何故だ。恵政宮さまがなぜ?》

そして、ソン翊衛士長からの告白も続く……

長老は思わず、
『陛下、なんのおつもりでございますか?
これは私を貶めようと画策している者のしわざでございます。』

陛下の長老を見て、
『ほぉー、画策とな。長老も不思議なことを申すな。』

スピーカーからはまだ声が続いている。



《マンション》

ソン翊衛士長はチェギョンから出た言葉に驚いた。

『シン君、私は何もされていないわ。翊衛士長さんも仕方なかったのよ。
それにね、きちんと食事も与えてくださったし、何一つ暴力も、酷い言葉もなかったわ。
ただ、命令に背けない何かがあっただけだわ。
それに……あの時…………あの植物園で外に連れ出してくださったのは翊衛士長さんですよね。』

『えっ、チェギョン……どうしてソン翊衛士長が……。だからといって許されないし、僕は許さない。』


『シン君、あなたは皇太子でしょ。今までだってどんなときも皇太子として頑張っていたでしょ。だから今もイ・シンとしてではなく、皇太子として翊衛士長さんだけではなく周りを見て。罪を償わないといけない人はまだいるはずなの。』

『チェギョン……』

『殿下……チェギョンさま…… ありがとうございます。そして、申し訳ございません。
あの時チェギョンを狙うように長老様から直接指示をされていたのは行方不明のチョン翊衛士です。チョン翊衛士は賭け事での借金が返せずにいたところ、長老様がその肩代わりをされる代わりに指示されたようでした。私も交通事故のことで翊衛士の勤務状況の操作をさせられました。しかし、当時はまだ良心の呵責からか、宮を欺いてそのようなことに加担する自らに耐えきれず密かに植物園に参りました。
私が到着した時には既に義誠大君様が……私は義誠大君様が命をかけてお守りになられた方を守りたかった。だからあの場から連れ出しました。』

『では、なぜ今回の計画は断らなかった。』

『私が断れば新たな罪人を生みます。そして、私ならば罪人になれども、チェギョン様のお命はお守りする覚悟でございました。』

『ありがとうございました。翊衛士長さん。』

『チェギョン……さま……』

膝から崩れ落ち涙を流してソン翊衛士長はチェギョンを見た 。
シンはハン翊衛士に合図しソン翊衛士長の身柄を拘束した。



その時だ。
『キャーッ。』

後ろを振り返るシン。

アルミトラックの中のヘミョン、イン、ファン、コン内官、そして、宮では陛下を始め、王族会の面々も突然スピーカーから流れた悲鳴に 驚いた。

《何が起こった?》

『チェギョン……チェギョンを離せ。』

『ふん、離すもんですか。殿下、私がシン・チェギョンの命を握っていると言いましたよね。私は王族会長老の娘、ミン・ヒョリンですよ。私との婚姻を今ここで受け入れていただきます。さもなければ、このまま……。』

そういうと、ヒョリンはチェギョンの首にナイフの刃を立てる。



もちろん、この声も宮には届いている。


《宮》

『長老、ソン翊衛士長がすべて話したぞ。それに、今の声に聞き覚えはあるか?長老には皇太子妃になれるような娘がおったとは初耳だが。』

陛下が長老に問いただす。

『いえ、私には娘はおりません。』

『しかし、今太子の前にいる女は確かにそう申したぞ。
太子、どうじゃ?』

『はい、陛下。確かに聞かせていただきました。』

そう、先ほど侵入したタイミングでシンの持ち込んだ小型スピーカーから、長老の声もマンションの部屋に響いた。


『嘘よ、お父様。私が貴方の娘だと、そうおっしゃってくださいましたよね。』

『私には、お父様と呼ばれる娘はおりません。
陛下、この娘は私に罪を着せようと何者かに吹き込まれたのです。惑わされませんように。』

『えっ……おと……う……さま。』