今回も切片の性質を紹介していきます。(補題2、3、4と定理3)
(補題2)
fを整列集合WからWへの順序単射とする。このとき次が成立する。
・任意の元x∈Wについてf(x)≧x
(証明)
M={x∈W|f(x)<x}とする。M=∅を示したい。
M≠∅だとする。MはWの空でない部分集合でWは整列集合だからminW=aが存在する。
a∈Mよりf(a)<aが成立する。 b=f(a)とする。b<aでfは順序単射だからf(b)<f(a)=b
よってb∈Mである。これはaの最小性に矛盾する。(a=minMでa>b∈Mとなるので)
(証明終)
(補題3)
Wを整列集合とする。このとき、次が成立する。
⑴x∈Wを任意の元とする。このとき、W~W<x>は成立しない。
⑵a,b∈Wを異なる任意の元とする。このとき、W<a>~W<b>は成立しない。
(証明)
⑴f:W→W<x>が順序同型だと仮定する。
このとき、fの値域(終集合)をWに拡張した写像f*:W→Wは順序単射である。
f*(x)=f(x)∈W<x>よりf(x)<xが成立する。これは補題2と矛盾する。
⑵a,bは異なる元だからa<bとしても一般性は失われない。
このときW<a>=(W<b>)<a>であるからW<a>はW<b>の切片とみなせる。
(補題4)
整列集合W,W*が順序同型だとする。このとき次が成立する。
・a∈Wを任意の元とする。ある元a*∈W*が存在してW<a>~W*<a*>(順序同型)が成立する。
さらにこのa*∈Wはa∈Wに対して一意的に定まる。
(証明)
a∈Wを任意の元とする。f:W→W*が順序同型だとする。このときf(W<a>)~W*<f(a)>…(※)が成立する。
よってfの値域(終集合)をW*<f(a)>に制限した写像は順序同型写像になる。よってa*=f(a)とすればよい。
a*だけでなくa**も条件を満たすとすればf(W<a>)~W*<a*>とf(W<a>)~W*<a**>よりW*<a*>~W*<a**>である。
補題3よりa*=a**が成立する。(証明終)
※の部分について
y∈f(W<a>)を任意の元とする。ある元x∈W<a>が存在してy=f(x)となる。
x∈W<a>よりx<aである。fは順序単射であるからy=f(x)<f(a)
よってy∈W*<f(a)>が成立する。y∈f(W<a>)は任意の元だからf(W<a>)⊆W*<f(a)>が成立する。
y∈W*<f(a)>を任意の元とする。f:W→W*は全射であるからある元x∈Wが存在してy=f(x)となる。
y∈W*<f(a)よりf(x)=y<f(a)となる。fは順序単射であるからx<aすなわちx∈W<a>である。
よってy∈f(W<a>)が成立する。y∈f(W<a>)は任意の元だからW*<f(a)>⊆f(W<a>)が成立する。
したがって、※は成立する。
さて、最後に定理3を示す。
(定理3)
整列集合W,W*が順序同型であるとき、WからW*への順序同型写像は一意的に定まる。
(証明)
f,gをともにWからW*への順序同型写像とする。a∈Wを任意の元とする。f(a)=g(a)が成立することを示せば良い。
補題4の証明(※の4行目)よりW<a>~W*<f(a)>とW<a>~W*<g(a)>が成立する。
よって、W*<f(a)>~W*<g(a)>だから補題3よりf(a)=g(a)が成立する。(証明終)
以上で切片の性質を紹介しました。(定理3と補題1,2,3,4)
次回は2つの整列集合の関係を切片を用いて考えていきます。
では、源義経に感謝。
参考文献
・『集合・位相入門』、松坂和夫
