今回は有界という概念について説明していきます。
(A,≦)を順序集合とします。Aの部分集合Mに次の関係≦(M)を定めます。
x,y∈Mを任意の元とします。x≦yの時に限りx≦(M)yとします。
この関係によって(M,≦(M))は順序関係になります。…(ア)
以降、≦(M)のことを≦と書くことにする。記号の乱用であるがAの順序と同じ意味であるから問題はないだろう。
練習問題1
上の事実(ア)を示しなさい。
(定義)
元a∈Aが下の条件を満たすとき、aをMにおける上界(または、上界)という。
(条件)任意の元x∈Mについてx≦aが成立する。
不等号の向きを逆にして下に有界を定義します。
Mの上界が存在するときMをAにおいて上に有界(または、上に有界)であるという。
同様に、Aにおいて下に有界であることも定義されます。
Mが上に有界かつ下に有界であるとき、有界であるといいます。
Mの上界全部の集合をM*と表すことにします。Mが上に有界であることはM*=∅であることと同値です。
(定義)
Mが上に有界でminM*が存在するとき、minM*をMにおける最小上界といい、supMで表す。
最小上界に関しては下が成立します。
①Mが上に有界でもsupMが存在するとは限らない。
②a=supMが存在するとする。Mの任意の元x∈Mに対してx≦aが成立する。
③a=supMが存在するとする。b∈Aとする。任意の元x∈Mに対してx≦bが成立するとき、a≦bが成立する。
(①の証明)
A=R-{√2},M=(0,√2)とすればMは上に有界だが(例えば上界として2が存在する。)M*=(√2,∞)となりminM*が存在しない。つまりsupM*が存在しない。
練習問題2
上の事実②,③を示しなさい。
maxとsupとの関係については下が成立します。
④a=supMが存在してa∈MのときmaxMが存在し、a=maxMとなる。
⑤a=maxMが存在するとき、supMが存在し、a=supMとなる。
⑥supMが存在するとしても、maxMが存在するとは限らない。
(⑥の証明)
A=R,M=(0,√2)とするとsupM=√2となるが、maxMは存在しない。
練習問題3
上の事実④,⑤を示しなさい。
次回は2つの順序集合の関係について見ていきます。
では、源義経に感謝。