今回は休憩ということで3次方程式について説明していきたいと思います。
①解の公式
みなさん1次方程式や2次方程式の解の公式は中学生の頃に学習したと思います。
3次方程式の解の公式も実は同様に存在することが知られています。(解の公式を直接載せるのはあまりに長くなるのでここでは割愛します。)
4次、5次、…と同様に解の公式が存在するかといえば実はそうではなくて解の公式は4次までしか存在しないことが知られています。(Galois理論を用いてAbelによって証明されました。)
ここで解の公式、というのは冪根(√(2乗根)とか③乗根とか)だけを組み合わせて解の公式を作ることはできないという意味です。
そういうわけで3次、4次の方程式は存在するわけですがそれを導出するのは当時の人にとってはめっちゃ難しかったそうです。(現在の我々でもそうですが。)
実は3次方程式の解の公式はAbel以前に見つかっていました。
3次方程式の解の公式の発見などその背景などを時系列順に解説していこうと思います。
②それまでの歴史
2次方程式を代数的に解く方法はメソポタミア文明(紀元前2500年ごろ)の時代に既に知られていました。
さらに、2次方程式の解の公式に現れる√の部分をかなり正確に測ることもできていたようです。また当時は16進法を用いていたようです。
さらに3次方程式を代数的に(√などを用いて)解くことこそはできませんでしたがかなり正確な解を近似できていたようです。
③3次方程式を解く動機1
古代ギリシアでは次のような問が考えられていました。
問 ある立方体がある。これの体積の2倍の体積をもつ立方体をコンパスと定規だけで作図できるか。
この問をよく見るともとの立方体の1辺の長さをLとし、作図したい立方体の1辺の長さをXとするとX^3=2L^3が成立します。
ここで3次方程式の登場です。これを解いてやるとX=2^(1/3)Lであるからこの問いは下のように置き換えられます。
問 長さ1の辺が与えられたとき長さ2^(1/3)の辺はコンパスと定規だけで作図できるか。
というように、3次方程式を解くことと図形の様々な状態とが対応していることがわかります。
④3次方程式を解く動機 2
時代は紀元前4世紀(古代ギリシア)まで進みます。
この頃メナイクモスという数学者が現れ「円錐を平面で切ることとより一般の3次方程式とが対応してそう」と考えました。
そうして3次方程式の状態とその根とのパターンが調べ上げられ、実際にその対応が正しいことがわかりました。ちなみに、円錐を平面で切ると下のいずれかになることが知られています。
楕円(円含む)、放物線、双曲線
⑤代数的な3次方程式の解の公式 1
代数的な3次方程式の解の公式を最初に与えたのはdel Ferro(1465~1526)だと言われています。
彼は下のような形の3次方程式を代数的に解けることを発見しました。
x^3+ax=b(a,bはともに正)
実は同様の方法でa,bの正負によらずdel Ferroの解法がうまく行くことがわかりさらに一般の3次方程式も上の形に置き換えられることがわかったので実質的にdel Ferroが解の公式を見つけたと言っても良いでしょう。
⑥代数的な3次方程式の解の公式 2
del Ferroは死後、解の公式を発表せず弟子たちに託していきました。そのうちの1人Fiorは解の公式を用いて当時盛んに行われていた計算勝負に勝ち続けていました。
その頃、Tartaglia(1499~1557)という数学者が下の形の3次方程式の解の公式を発見しました。
x^3+ax^2=b(a,bはともに正)
さらにFerroの解法にもたどり着き、そのことは徐々に噂になっていきました。
Cardano(1501~1576)という数学者がTartagliaに頼み込み、世間にバラさないという条件で3次方程式の解の公式を教えてもらいました。
しかし、del FerroがTartagliaの前に既に3次方程式の解の公式を発見していたことを知りTartagliaとの約束は破られCardanoは3次方程式の解の公式を発表しました。
こうして3次方程式の解の公式は「Cardanoの公式」という名で知られることになりました。
⑦古代ギリシアでの問
③でこのような問を紹介しました。
問 ある立方体がある。これの体積の2倍の体積をもつ立方体をコンパスと定規だけで作図できるか。
この問の答えは「NO」です。これはGalois理論を学習するとわかります。
⑧まとめ
このように3次方程式の解の公式など1つのテーマに絞ってもかなり歴史を感じることができます。
最後はCardanoが美味しいところを総取りしていったように見えます。しかし、3次方程式の解を体系的にまとめあげたのはCardanoです。
また彼は4次方程式の解の研究の第1人者でもあるのです。(4次方程式に関してもいろいろ歴史があります。)
では、源義経に感謝。