今回は全順序について説明していこうと思います。Zornの補題の主張にでてきた「全順序」です。
(定義)Aを集合、A×Aをその直積集合とします。
A×Aの部分集合Xに対して(a,b)∈Xが成立するときa~bと書くことにします。
このとき~は集合A上の関係である、と言います。
関係の例
⑴Aを実数全体の集合R,Xを0以上1以下の実数とします。
このとき、a~bとは(a,b)∈Xのことですから下が成立します。
①0~0 ②0~1 ③2/3~1/2
⑵Aを実数全体の集合R,X={(a,b)∈R×R|a≦b}とします。
このとき、下が成立します。
①0~0②1~2
普通、集合Xについては省略されて~の定義が述べられます。
例えば、「X={(a,b)∈R×R|a≦b}とする」という代わりに「a≦bのときに限りa~b」などと書きますのでこれ以降それに習うようにします。
(定義)集合A上の関係~が下の3つの条件を満たすとき、~は同値関係である、と言います。
⑴任意の元a∈Aに対してa~a
⑵任意の元a,b∈Aに対して、a~b⇒b~a
⑶任意の元a,b,c∈Aに対して、a~bかつb~c⇒a~c
練習問題1
実数全体の集合R上の関係~を次のように定める。このとき~が同値関係となるようなものを全て選べ。
①a=bの時に限りa~b
②a≦bの時に限りa~b
③b≦a≦b+1の時に限りa~b
(定義)集合A上の関係~が下の3つの条件を満たすとき、~は順序である、と言います。
⑴任意の元a∈Aに対してa~a
⑵任意の元a,b∈Aに対して、a~bかつb~a⇒a=b
⑶任意の元a,b,c∈Aに対して、a~bかつb~c⇒a~c
練習問題2
実数全体の集合R上の関係~を次のように定める。このとき~が順序となるようなものを全て選べ。
①a=bの時に限りa~b
②a≦bの時に限りa~b
③b≦a≦b+1の時に限りa~b
順序はほとんどの場合、≦と書かれます。これは実数上の≦と記号が同じなのですが意味的には一緒ではないです。(練習問題2②のように同じ意味をなすこともありますが)
a≦bかつa≠bが成立するとき、a<bと書きます。
(定義)
集合A上の順序≦について集合と順序の組(A,≦)を順序集合と言います。順序集合(A,≦)は、≦が省略されてAとなることも多いです。
(定義)
順序集合Aについて下が成立するとき、Aは全順序集合であると言います。(順序は≦)
・任意の元a,b∈Aに対してa≦b,b≦aの少なくとも一方が成立する。
練習問題3
集合G={a_1,a_2,a_3,a_4}上の関係≦を下のように定める。このときGは順序集合になることを示せ。またGが全順序集合となるのを全て求めよ。ただしiとjは1以上4以下の整数である。
①i=jのときに限りa_i≦a_j
②i≦j(実数として)のときに限りa_i≦a_j
③i=jまたはi=2かつj=3のときに限りa_i≦a_j
次回はこの順序によって特別たらしめられるいくつかの元について解説していきます。
では、源義経に感謝。