夜中にテレビを見ていたら、緊急ニュースのテロップが流れた。1ドル=75円台をつけ、戦後最高値を更新した、とのことだ。まぁ、従来から言っているので今更?という感じだが:
円、一時75円台突入=戦後最高値更新〔NY外為〕(19日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110820-00000000-jijc-brf
”週末19日のニューヨーク外国為替市場では、欧米の景気に対する根強い懸念を背景に安全資産として円が買われ、戦後初めて1ドル=75円台に突入した。円は一時75円95銭まで上昇し、東日本大震災直後の3月17日に付けた76円25銭の最高値を更新。世界経済の先行き不透明感を背景とした急激な円高で日本の輸出企業が打撃を被り、日本経済に一段の下押し圧力が掛かるリスクが強まっている。午後5時現在は76円49~59銭と、前日同時刻(76円52~62銭)比03銭の円高・ドル安。
米国債が初めて最上級格付けを失った今月5日以降、米国の金融市場は不安定な状況に置かれている。雇用や住宅市場の本格回復にめどが立たず、リセッション(景気後退)入りの可能性が取り沙汰されている上、ユーロ圏の債務危機が米国の金融システムへ波及しかねないとの懸念が投資家の間で意識され始めた。
さらに、中尾武彦財務官が米メディアとのインタビューで「円を特定の水準に誘導するための持続的な為替介入を実施する計画はない」と語ったことが伝えられ、円を買う動きが加速。高値更新後は、政府・日銀が緊急対策を検討中との報が注目を集め、追加介入への警戒感から円は再び76円台に押し戻された。
市場関係者は「4日の円売り介入がなければ今ごろもっと円高が進んでいたかもしれない」(邦銀筋)と指摘。ただ、経常黒字国の日本やスイスなどの通貨に資金が流れやすい構図は当面続くとして「一段の円高余地がある」(同)との見方を示した。
ユーロは同時刻現在、対ドルで1ユーロ=1.4391~4401ドル(前日午後5時は1.4329~4339ドル)、対円では同110円15~25銭(同109円70~80銭)。”
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円高で輸出企業に打撃が・・・とされているし、もちろん、その側面はあるのだが恐らく輸出企業からしてみれば価格面もさることながら、欧米のリセッションでそもそも「量がさばけない」という状況にあるのではないか?また、少々の円高云々よりも、韓国・中国製品など質は悪くとも低価格・・・という商品が蔓延し、そもそも日本の技術力=高付加価値=高価格路線が勝負できるマーケットは縮小している。
金融緩和して円を大量に市場放出すれば・・・という声も一部にあるが、そもそも米国が大量に金融緩和している現状で効果は余り期待できない。日銀が一層の緩和をしても米国が更なる緩和をすれば意味が無い。いわゆる通貨の安売り競争で、資金は金などコモディティーに向かうだけ。
構造的には、日本の大幅な貿易黒字も一つの要因として、貿易協議で構造的な輸出超過国と輸入超過国のバランスを改善することが出来ない以上、為替で修正を図る、というのが自然だし、止むを得ない。上記記事でも触れられているが、貿易黒字の外貨を積極的な対外投資で使う、ということが行われない以上、やむを得ない。
介入警戒・・・という言葉も常套文句で使われるが、協調介入の目は小さく、単独介入にしか過ぎないとすれば効果は一時的で市場の警戒感はそれほどではないだろう。
繰り返すけれども、円高をどうにかしよう・・・ではなく、円高を前提に日本としてどう立ち回るのが全体の国富の観点から効果的なのか?を議論すべき時だ。結論は見えているけれども。