(1週間前に書き掛けたが、アップしてなかったあせる


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ようやく、とはいっても、まだまだ十分疑いの眼で見なければならないが、菅首相の辞任言及に伴って、民主党代表選が喧しくなってきた。一部では、実質的に、小沢vs仙谷、の代理戦争の様相で解説しているところがあるが、その主要論点として、増税かどうか?を挙げている。あるいは、マニフェスト撤廃(ないし、修正)vs堅持派、とも言えるかもしれない。



しかし、この論点整理はちょっとズレているような気がする。マニフェストを維持する、あるいは(消費税)増税に反対する、といっても、彼らは無限定ではない。ここらへん、国民生活の観点では極めて重要なので注意喚起しておく。



見極めなければならないのは、消費税増税を:



- 従来通り、社会保障限定の議論で留めるか、


- 震災復興費用まで、”ついでに”織り込んでしまうか?



ということだろう。気を付けなくてはならないのは、なんとなく、震災復興のための増税・・・というと、国民・有権者の通りが良さそうな雰囲気になるので、使い勝手の良い言い訳として使われてしまうことだ。



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そもそも論に立ち返ると、日本全体の景気回復が為されなければ、東北というか、東日本というか、の復興はない。この意味で、表面的に増税に賛成するか(というか、推進するか)反対するか、は兎も角、現状、議論の前提を欠いたまま、という状態である。



社会保障についても同じで、かつて自民党が用いた表現を借りるならば、果たして消費税増税で『百年安心プラン』といえるか?といえば、全く不安感は取り除かれない。構造的に現役世代が高齢者世帯を支える、というコンセプトで変わっておらず、人口減少という現実の問題に向き合っていないからだ。



さて、それはともかく、取り急ぎ、景気回復に議論の的を絞る。ここで言いたいのは、増税は不要どころか、復興において「そもそも国費(公金)投入は最小限に抑えるべき」ということだ。



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震災以前から(そして基本的なスタンスは現在でも変わっていないが)、主として「みんなの党が掲げる日銀法改正 ~ マネーサプライの増大」のみで事態は改善しない、ということを申し上げてきた。いまだに渡辺氏は誤った議論を主張し続けている。



しかし、震災復興というテーマが出た現時点で、少しニュアンスは補足する必要がある。即ち:



「震災以前は、確かに有効需要、というか、潜在需要が存在していなかった - このため、金融政策は意味が無かった - といえるが、震災以後は、確かな”復興需要という潜在需要”が存在するから



である。一般に、潜在需要が存在するならば、マクロ経済学における需要と供給の一致を図ればいい(有効需要とする)だけで、そのための金融政策 - 即ち、消費・投資に必要な資金を金融的に融通する - ことは有効である。この潜在需要が存在しない場合、金融を増やしたところで、資金は短期金融市場で滞留/対流するだけであって実体経済に何ら影響しない。



しかし、だからといって、みんなの党の議論が有効になった訳ではない。何故なら、彼らは狭義の金融政策、即ち日銀のハードカレンシー供給論に終始しているから、である。



広義の金融政策、即ち、中央銀行が発行した通貨が市場(特に実体経済市場)に流通するための、金融システム全般のコントロール、が無ければ意味が無いことに変わりないから、である。



以前書いた通り、中央銀行である日銀は、銀行にしかカネを融通しない。実体経済市場にカネを回すためには、銀行がカネを貸さなければならない。



だいぶ以前にも触れたかもしれないが、バブル崩壊後、日本の金融システム改革は主として資金供給に対して制約的に(制限的に)為されてきた。敢えて乱暴にまとめれば、それは一言で「コンプライアンスの偏重」であって、結果的にはカネを貸しにくくする方向でしかなかった。この点にメスを入れなければならない。



ほぼ唯一の例外といっていい制度はリレーションシップ・バンキングであったが、これは議論が為されただけで具体性が乏しく結果的にはほとんど機能しなかった。



今回、例えば、であるが、復興融資制度のようなものを作ることは可能である。そして、この復興融資には金融機関のリスク評価を抑えられるように(即ち、BIS所要資本を減少させる)すれば、カネは流れる。



単純な手法を挙げれば、何も国はカネを流す必要はない。一定の復興計画を事業者が作れば、それを認定して保証すればよいだけのことだ。BIS規制上、国家保証が為された債権についてはリスク・ウェイトはゼロですむ(国債を買ってるようなもの)。保証は貸し倒れが発生して実行されない限り、キャッシュフローは生じない。増税するまでもなく、予算化する必要すらない(手続き的には、債務引き受け行為で国会承認が必要かもしれないが)。



もちろん、保証が履行される事態は最小限に抑えなければならない(この点で、石原・新銀行東京やオリンピック招致資金が失敗例)。このためには、モニタリングなどの技術が必要。



結局のところ、やはり今の日本に必要なのはプロジェクト・ファイナンスのノウハウ、ということになる。