彼女とのデートの帰り道にその屋台はあった。ひと通りのディナーを楽しみ最後のデザートまで間食したお腹だったが、どうしてもあとひと押し塩気があるものが欲しくて渋谷駅までの帰り道、明治通りをぶらぶらしていた。
きらびやかな大通りにその屋台は止まっていた。中には大きな鉄板。上では通常より遥かにでっぷりとしたソーセージが鎮座していた。
「ジュー」と肉汁が焼ける音に促されるように「ここにしよう」と彼女に提案し、店先に並んだ。店主は日本人では無かった。アフリカ系だろうと思われる黒人。ホットドッグはアメリカでは飲み物。そんな話を聞くくらいだからやはり本場。味への期待値は高まる。
メニューはシンプルにホットドッグ500円。値段の割に大きさもありコスパの良さもデート終わりには有難かった。
「オイシイ?」焼いている間、ガードレルに寄りかかって食べていた先客に店主は尋ねる。
「美味しい美味しいよ!」眼鏡のサラリーマンは笑顔。
焼いているあいだあんまりにも美味しそうなのでソーセージから目が離せなくなっていると、破れた皮から肉の汁が飛び出していた。
受け取ると、重量はそこまででも無かったか
が、パンから飛び出た中の具材の多さに圧倒。齧り付く。ソーセージの感触に顎が喜んでいた。味付けは意外と濃すぎない、日本人の味覚に合わせたものだった。彼女とかわりばんこにかじりつき、口元を何度も拭いながら食べた。
「あ、屋台好きだな」どうしようもなくて懐かしくも、楽しくもなった
ふと思いゴミを返す際に最後に名前を聞いた。
「フランキー、ダーケンドッチデモイイヨ」
にこやかに黒人店主はいった。
こんなに美味しいホットドッグは初めてだった。だがそれ以上にこの店主に愛着が湧いた。