【日曜経済講座】論説員・岩崎慶市 問われる菅改造内閣の税財政

2010.9.19 07:46
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/100919/fnc1009190750000-n1.htm

消費税上げの議論加速を


衆院選公約は破綻



 民主党代表選は菅直人首相の現実路線への修正を選んだ。消費税引き上げの必要性や昨年夏の衆院選マニフェスト(政権公約)の見直しなどの主張が通ったことになる。だが、首相の認識はまだまだ甘く、本気度にも疑問が残っている。


 今回の代表選は、まるで別の政党同士が戦っているようだった。小沢一郎氏はマニフェスト至上主義を掲げて菅氏の現実路線を真っ向から批判、子ども手当や農家の戸別所得補償などの完全実施と消費税凍結を主張してやまなかった。


 16・8兆円の財源問題を指摘されると、これも政権公約である一般会計と特別会計の予算組み替えと、ひも付き補助金の一括交付金化による無駄の削減を挙げた。さらには、政権公約にもなかった無利子国債による国債増発での財政出動にまで言及した。


 しかし、衆院マニフェストはすでに破綻(はたん)しているのだ。昨年の事業仕分けでも特別会計から捻出(ねんしゅつ)できた恒久財源は5千億円程度で、公約の部分実施でさえ一度限りのいわゆる特別会計埋蔵金と国債増発に頼らざるを得なかった。そもそも、一般会計から見直し可能な特別会計に流れる金額は3・6兆円しかなく、まとまった財源捻出などできないのである。


 補助金の一括交付金化にしても、大半は削減が難しい社会保障関係であり、仮に財源を捻出できたとしても、小沢氏はそれを歳出削減につなげるとは明言しなかった。無利子国債による景気対策に至っては唐突というしかない。


 これは、いくら無利子であっても相続税の減免が伴う仕組みである。通常の国債より財政的メリットがあるとは思えないし、その恩恵を受けるのもごく一握りの大金持ちにすぎない。国債の消化不能という緊急事態ならまだしも、なぜ今なのか理解に苦しむ。

  

支持は現実路線に



 これだけの反論材料がありながら、菅氏は「マニフェスト実現は簡単にはいかない」と述べるにとどまり、小沢氏の主張を真っ向から論破する姿勢をみせなかった。それは肝心の消費税引き上げでも同じで、「消費税を含む税制の抜本改革と社会保障財源を一体的に議論する必要がある」と繰り返すのみだった。


 生煮えながらも税率まで踏み込んだ参院選での発言に比べると、大幅な後退である。参院選敗北の原因を菅氏の消費税発言に求める党内批判に配慮したからだろう。今後も政権運営の円滑化を最優先にするようだと、衆院選マニフェストに先祖返りしないか心配でならない。


 とにもかくにも、菅氏は勝利した。マニフェスト原理主義ではない現実路線が支持を得たのである。ならば菅氏はまず、路線修正した理由を再確認することだ。それは財源なき衆院選マニフェストがあまりに非現実的で、かつ財政健全化と社会保障の安定財源に消費税引き上げが不可欠だということだろう。


 菅改造内閣のスタート台はここからでなければならない。そして、国と地方の債務残高が国内総生産(GDP)の1・8倍と先進主要国に比べ突出して悪化し、健全化の足取りも極めて鈍い現実を改めて深く認識することだ。


 指摘するまでもなく、「債務残高対GDPを21年度から引き下げる」などの日本の財政健全化目標は、主要国間で例外扱いされた落ちこぼれである。しかも、はるか先を行く主要国は日本よりずっと厳しい健全化策に取り組んでいる。

  

目立つ日本の甘さ



 保守党政権に交代した英国は、付加価値税の17・5%から20%への引き上げや年金・児童手当などの社会保障給付の見直し、地方支援の削減などに入った。ドイツは失業保険給付の抑制、フランスも年金支給開始年齢の引き上げなど痛みを伴う政策を次々と打ち出している。


 周回遅れの日本がバラマキ政策の一部見直しにとどまり、消費税も行方が定まらないのでは話にならない。こんな危機感のなさでは、落ちこぼれの健全化目標さえ達成できないだろう。


 菅政権が視点を党ではなく国に据えるなら、バラマキ公約の撤回など当然ではないか。そうすれば、自民党も消費税引き上げと社会保障制度のあり方について協議に応じると表明している。“ねじれ国会”を理由に最重要課題の解決が放置されるようだと、国民は政治そのものを見限る。


 コップの中の争いにかまけている暇など片時もないのである。




いすけ屋


 産経新聞の【日曜経済講座】は、田村秀男氏執筆の時は全く納得出来る内容であるのに、今回の先生の時はいつも、首をかしげる。何故ならば、この先生、エコノミストの一人である筈なのに、「消費税上げの議論加速を」というタイトルのもと、早く消費税を上げろと言ってる。それは現実路線の下りで、「財政健全化と社会保障の安定財源に消費税引き上げが不可欠」と、本音を述べている。



 「日本の財政健全化目標は、主要国間で例外扱いされた落ちこぼれである」とも言ってる。ならば聞きたい。何故、日本の通貨だけが円高なのか。信頼できるから円高になるのではないか。ドル安だから円高になるとおっしゃる経済評論家さんもいるが、ドルだけではなく、ユーロもしかり、アジア諸国の通貨も全て「安」なのだ。結局、ドル、ユーロより、「円」が安全ということで、「円」が買われた結果の円高である。



 国と地方の債務残高が国内総生産(GDP)の1・8倍と先進主要国に比べ突出して高いと仰るが、海外資本はわずか5%であり、GDP比率でいうと、0.09である。だから、例外扱いされたのであって、他の主要国とは全く内容が違うからである。どこが落ちこぼれなのか。この先生は、いつも財務相の宣伝と同じ論調である。小泉政権の時も、構造改革マンセー派の筆頭だった。効率の悪い企業は立ち去れと言って、どんどん潰して、輸出企業を助成したが、結局、海外に出て行ってしまった。どこが構造改革なのか。米国ファンドに金融・保険会社を売り渡し、郵政民営化と称して、郵貯簡保を分離し、向こうが買いやすいように環境を整え、公共事業を削り、デフレを助長しただけだった。



 次に、「無利子国債による景気対策に至っては唐突というしかない。」というくだり。矛盾しているのは、「国債の消化不能という緊急事態ならまだしも、なぜ今なのか理解に苦しむ」と結んでいるが、それでは景気対策は要らないと言うのか。増税すれば財政はバランスするというのか。無利子国債はひとつの方法であり、唐突でもなんでもないし、国債の消化不能時に限り使う手段ではない。



 日本の消費税は主要国に比べて異常に低いと言われるが、サラリーマンが天引きされる年金保険、健康保険、失業保険料などを考慮すると、すでに21%に達している。もちろん少子高齢化の現実を見れば、消費税の引き上げはやむを得ないが、その前に政府としてやることがある。もちろん景気対策であるが、並行してデフレ脱却を即実現しなければならない。デフレは日本人の誰もが未経験だから、その怖さもわからないし、対処の方法も実は半信半疑だ。理屈では簡単である。インフレを起こせばよい。



 ところが、財務省は過剰生産がデフレの原因だとして、消費を海外に委ねようとした。グローバル化だ何だと言って、規格まで海外に合わせ、金融においてはBIS規制を丸のみし、株式も時価評価に変え、会社の値打ちを株式価格で評価したり、社員よりも株主が大事というアメリカ式解釈を国民に押し付けたりもした。



 実際は、通貨が世間に流通していなかったのがデフレの原因だった。日銀は金融緩和したが、金融政策により銀行が、借りたい企業には貸し渋り、貸したい企業は、バブル崩壊で積み上がった負債を返すのに一生懸命で、なかなか借りてくれない。仕方がないから安全な国債を買う。こうして日銀の金融緩和策は空振りに終わっている。その最たる原因は、政府が財政出動をためらったからである。日銀も政府も、デフレ時の対応を誤ったのだ。

 

 はるか先を行く主要国は日本よりずっと厳しい健全化策に取り組んでいる事は事実だが、その主要国もデフレ基調になってきた。「英国は、付加価値税の17・5%から20%への引き上げ、ドイツは失業保険給付の抑制、フランスも年金支給開始年齢の引き上げなど痛みを伴う政策を次々と打ち出している。」といっても、これらはすでに日本では経験済みだ。



 消費税を3%から5%に引き上げ、年金支給開始年齢も60歳から今では65歳である。痛みを伴う政策など、とっくに経験している。要するに、緊縮財政はデフレを招くという経験が日本によってなされている。ユーロは通貨発行は単独では出来ないから、通貨発行しなかった日本と同じ運命にある。アメリカはドルをじゃんじゃん刷っているから、インフレの危険はあるが、決してデフレにはならない。

 

  「周回遅れの日本」と言う認識もおかしい。なんでもヨーロッパが優秀というのは、せいぜい昭和の初期までである。戦後は特に経済面では、2周も3週もヨーロッパを引き離している。従って本来なら日本がデフレ対応策の見本を世界にみせてやるのが順番である。たまたま政治力が劣るもんだから、こんな状態を20年も続けている。その訳は、これを指導したのが財務省であり、この先生のような御用論説員、御用評論家、マスコミが財務省を支持するからだ。



 菅内閣には、民主党のスローガンどおり、脱小沢の前に、脱官僚を貫いてもらいたい。国会の質問で「乗数効果」を知らずに大恥かいて、それから財務官僚の世話になりっぱなしの菅さんだが、総理大臣を引き受けるなら、それぐらいは勉強しておいてもらいたい。麻生さんは「未曾有」を「みぞうゆう」と読んで日本中からバカにされたが、誰しも間違えて覚えた漢字はあるものだ。それに引き換え、何故マスコミは菅さんのこの無知を攻撃しないのか。こっちの方が事は大きい。偏向マスコミめ!