ルイス・アドリアーノ 窮地に立つ

第10節、シャフタール・ドネツクとロザラム・Utdの試合にルイス・アドリアーノの出番はなかった。この日のMOMは、今季加入した元バレンシアのセンターＦＷパコ・アルカセル。先制点を上げ、後半でも左サイドアタッカーのタイソンのシュートをはじいた球を押し込んで２点目を上げた。
　この試合を期にルイス・アドリアーノは最近５試合で４試合に出場なしという結果に終わった。


　○シーズン前は、スタメンの座が約束されていたはずだったが……。チームの大黒柱に何が起こったというのか。


　今シーズン開幕からスタメン起用をされてきたアドリアーノだが、そこから調子は良くなかった。開幕１０試合で得点はおろかアシストもなし。アドリアーノは長く苦しんでいた。

　決定機はあった。しかし、決められなかったのだ。そしてそのどれもがチームの勝ち点を取りこぼす結果につながってしまった。　昨シーズンの活躍を知り、対戦チームはアドリアーノを警戒するようになっている。対戦チームは彼に仕事をさせまいと様々な対策を行っている。

　昨シーズン、持ち前の得点感覚でコンスタントにゴールを挙げていた昨シーズン後半の姿とは違い、ゴール前での冷静さを失い始めたのである。そしてこのころからアドリアーノは、記者団に対してもこう語るようになる。
「僕がゴールを決めていればこうはならなかった。クラブがイマイチ波に乗れないのは僕のせいだ」
　周囲にとっても痛々しい。ファンは、アドリアーノのことを「潔い」と思う以上に「そこまで思い詰めて大丈夫なのか」と心配するようになった。「普段から真剣に練習してきた彼が、このように打ちひしがれている様子を見るのはかわいそうだ」とシャフタールの監督は気遣った。


○新ＦＷの加入により出場機会は奪われた

　
　シャフタールのフロントは将来性を重視したFWの獲得狙い、スカウトを西欧州各地に派遣した。その結果が、パコ・アルカセルの獲得である。そして第10節の試合後にドネツク監督は語った。「アドリアーノ一人に負担を負わせすぎた。自分がゴールを決められずにチームが波に乗れないことで、過剰な責任を感じて精神的に苦しんでいる。アルカセルが点を取り、負担の一部分を担うことができれば、楽になって昨季の得点王は本領を発揮してくれるはずだ」
「結果が出ていない以上、パコを起用するのは当然のことだと思う」。アドリアーノはチームの決定をそう受け止めていた。もっとも、その試合でパコが成績を残した事で同時に出場機会が奪われるということを意味していた。

　現在チームは勝ち点２２の４位。首位との勝ち点差も７で射程圏内だ。少なくともプレッシャーは軽減された。次にチャンスをもらうとき、余計なことは考えなくていい。失うものがなかった昨シーズンのように、ただゴールさえ狙えば――。