今回は脊髄性筋萎縮症です。
脊髄性筋萎縮症(spinal muscular atrophy:SMA)は、進行性筋力低下を特徴とする遺伝性疾患で、常染色体劣性遺伝形式をとるものが多く、5番目染色体上のSMN1遺伝子欠失によって引き起こされます。
運動神経には、上位運動ニューロン(一次運動ニューロン)と下位運動ニューロン(二次運動ニューロン)に分類され、上位運動ニューロンとは、簡単に言えば中枢神経で、脳~脊髄までを指し、下位運動ニューロンは、脊髄前角細胞~末梢神経までを指します。
脊髄性筋萎縮症:SMAは下位運動ニューロンの障害です。
脊髄性筋萎縮症:SMAの身体症状の特徴は、左右対称性の筋トーヌス低下、筋力低下、繊維束性収縮、手指振戦、腱反射減弱~消失です。
筋トーヌスとは安静状態にある筋の緊張状態で、振戦とは筋肉の収縮と弛緩が繰り返される不随意でリズミカルな震えで、繊維束性収縮とは筋肉が細かくぴくぴくと小さなけいれんのような動きで、運動神経や脊髄の運動神経細胞(脊髄前角細胞)の障害にて出現します。
脊髄性筋萎縮症:SMAは、乳幼児、子ども、10代の青少年から成人まで幅広い年齢層で発症し、その重症度も様々で、発症時期と運動能力の達成度により5病型に分類されます。
①0型 - 胎児期に発症する再重症型。出生直後より呼吸困難を示し、生後数か月以内で死亡する。
②Ⅰ型 - 生後6か月までに発症。自力で座位を保持する能力を獲得することなく、2歳までに人工呼吸管理あるいは死亡の転機をとることが多い。
③Ⅱ型 - 生後18カ月までに発症する中等症型。自力で起立し、歩行する能力を獲得するには至らない。嚥下障害や排痰障害、呼吸器合併症や、脊柱の変形が問題になる。
④Ⅲ型 - 生後18か月以降に発症する軽症型。自力で起立し、歩行することが可能な時期がある。
⑤Ⅳ型 - 20歳以降に発症する最軽症型で、生涯を通じて歩行可能であることが多い。
有効な検査としては、以下のものがある。
1.血液検査
血清CK(CPK)の上昇を認めるが、正常の10倍以上にはならないとされます。
2.針筋電図
陽性鋭波、繊維自発電位、繊維束攣縮といった所謂脱神経電位を認め、運動単位電位が高電位、持続時間延長を示す。つまり、下位運動ニューロンの障害を示唆する異常所見を呈する。
3.神経伝導検査
運動神経の伝導速度は正常下限値の70%以下で、時たま感覚神経の異常を認める場合もある。
4.筋病理検査
筋組織を生検して、筋の骨格筋の形態的変化や蛋白の増減を評価する検査です。SMAでは萎縮繊維のグループ形成や肥大繊維の散在を得られることがあります。
5.遺伝子検査
遺伝子検査はSMN1遺伝子の異常の有無を調べます。また、原因に直結するSMN1遺伝子欠損と、SMN2遺伝子のコピー数が重要で、SMN2遺伝子のコピー数が多いほど重症度が低くなります。

治療は、遺伝学的検査によりSMN1遺伝子の欠失又は変異を有し、SMN2遺伝子のコピー数が1以上であることが確認された患者へのアンチセンスオリゴ核酸(ASO)薬であるヌシネルセン;スピンラザ髄腔内投与の適応が認められています。
なお、SMN2遺伝子のコピー数が1の患者及び4以上の患者や、永続的な人工呼吸が導入された患者における有効性及び安全性は確立していないようです。
乳児型脊髄性筋萎縮症に対しては初回投与後、2週、4週及び9週に投与し、以降4ヵ月の間隔で投与を行い、乳児型以外の脊髄性筋萎縮症に対しては初回投与後、4週及び12週に投与し、以降6ヵ月の間隔で投与を行うこととし、いずれの場合も1~3分かけて髄腔内投与します。
腰椎穿刺とは、背中の腰のあたり、真ん中から背骨の中に存在する脊髄くも膜下腔に向かって針を挿入し、脳脊髄液の圧測定や、液採取を行う手技です。
そう、スピンラザは髄腔内投与、つまり、腰椎穿刺を行い、そこへ薬剤を投与します。
副作用としては、主な副作用は頭痛、背部痛、発熱、腰椎穿刺後症候群、嘔吐が主であるようです。
それ以外に、呼吸不全の治療として人工呼吸器や非侵襲性気道内圧陽圧人工呼吸器を用いる呼吸管理(noninvasive ventilation:NIV)を用います。
栄養管理には、経鼻胃管チューブ、胃瘻、中心静脈栄養が必要になることがあります。
また、骨格変形、特に後側弯の程度が強く、日常生活で外科的治療(脊柱固定術)が必要になる場合があります。
以上です。